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ハンセン病で強制退学の母校、75年ぶりに訪問 御前崎出身の石山さん 「やっと古里と心つながった」

 おかえりなさい-。小学6年生でハンセン病と診断され、強制退学させられた御前崎市出身の石山春平さん(87)=川崎市=が19日、75年ぶりに母校に当たる御前崎市立第一小を訪れた。病気に対する差別や偏見から逃れるため古里を離れて半世紀以上。同級生2人と正門をくぐった石山さんは「夢がかなった。やっと古里と心がつながった」と喜びを語った。

75年ぶりに母校を訪問したハンセン病元患者の石山春平さん(中央)=19日午後、御前崎市立第一小
75年ぶりに母校を訪問したハンセン病元患者の石山春平さん(中央)=19日午後、御前崎市立第一小

 友人らの協力で6月に卒業証書を受け取った石山さんはこの日、念願だった母校訪問が実現した。校舎内に入ると教職員らが温かい拍手で出迎え、在校生がメッセージを寄せ書きした黒板の前で石山さんは同級生と談笑や記念撮影を楽しんだ。当時、通っていたのは同校の前身となる小学校で、現在は校舎など跡形もないが「多くの苦しみがあったが、生きている間に小学校に来られてよかった」と目を潤ませた。
 石山さんがハンセン病と診断されたのは小学6年の8月だった。夏休み明けに診断書を学校に提出すると、これまで優しかった担任の態度が急変し「手のひらを返したように汚いもの扱いされた」という。退学後は世間から隠れるため自宅納屋で4年ほど暮らし、16歳で御殿場市の療養施設に入った。数年後に病は完治し32歳で社会復帰したが、人生の原点とも言える小学校に足を運ぶことができず「古里との心の距離は離れたままになっていた」。
 近年は同窓会にも呼ばれ、旧友たちと交流している石山さん。小学生時代から続く苦しい過去は乗り越えた。しかし、社会に目を向ければ今でも偏見差別を恐れ、自由に行動できない元患者は少なくないと指摘する。石山さんは「ハンセン病患者が人権をないがしろにされてきた過去を忘れてはいけない」と話し、「小学校に通う子どもたちに人権の大切さを学んでほしい」と訴えた。

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