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イルカにクルーズ船…港町・清水で「プチ旅」気分を

 清水港で目撃された「野生のイルカの赤ちゃん」。実は港内には2020年ごろからイルカの群れがすみ着いていて、当時の「珍客」扱いから今や「港の名物」に。ハクチョウやユリカモメとともに見ることができるチャンスもあります。国際クルーズ船受け入れも再開し、新たな賑わい創出に期待が集まる清水港の動きについてまとめました。

清水港に赤ちゃん! 専門家「人工的環境で繁殖はレア」【動画あり】

 2020年6月から清水港内にすみ着いているミナミバンドウイルカの群れに、繁殖が確認されたことが2日までに分かった。体長1メートル弱の赤ちゃんイルカ1頭は生後1カ月以内とみられ、大人のイルカ5頭に寄り添われながら遊覧船の近くまで寄ってくる様子が観察できる。専門家は「人工的な環境で繁殖が行われたレアケース」と指摘する。

親イルカに寄り添って泳ぐ赤ちゃんイルカ(手前左)=2日午後、清水港内(写真部・二神亨)
親イルカに寄り添って泳ぐ赤ちゃんイルカ(手前左)=2日午後、清水港内(写真部・二神亨)
 富士山清水港クルーズによると、最初に確認できたのは3月31日午前の「イルカウオッチングクルーズツアー」。1日4回の定期便以外の特別便で乗客80人が乗っていた。2回目は4月2日午後の定期便。いずれも目撃した同社営業部の鈴木佳奈子さん(24)は「いつにも増して皆で固まって泳いでいた」と話した。
 観察できたのはいずれも港内西側にある清水エル・エヌ・ジー袖師基地付近の海域。鈴木さんは「寝床にしているのかな」と推測。東海大海洋学部の大泉宏教授(海洋生態学)は「人工的な環境に定住すること自体が珍しく、繁殖は知る限り初めて」と語った。
 地元観光関係者は「大型連休に向け清水の観光振興に明るい話題が増えた」と期待をにじませた。
〈2024.04.03 あなたの静岡新聞〉

動 画

異例の“長居” 6頭の群れ 駿河湾から迷い込み1年以上

※2021年11月28日静岡新聞朝刊

清水港内にすみ着いているイルカの群れ。奥は駿河湾=11月上旬、静岡市清水区
清水港内にすみ着いているイルカの群れ。奥は駿河湾=11月上旬、静岡市清水区
 清水港に1年以上すみ着き、地元関係者の間で話題になっているイルカの群れ。現地調査を続ける専門家は「大型船が頻繁に行き交う狭い港内に群れがこれだけ長く滞在するのは、全国的にも例のない現象」と驚く。10月から11月下旬にかけて、静岡市清水区の富士山清水港クルーズが運航する遊覧船から“港の新住民”を取材した。

 「昨年の夏から秋ごろにかけて駿河湾からイルカの群れが迷い込んで来て、港内の居心地が良いのか、すみ着いています。海面にじっと目を凝らしていると、かわいいひれが見えるかもしれません」。清水港を周遊する遊覧船の船内にアナウンスが響いた。海の向こうには雪化粧した富士山を望むことができる。
 遊覧船からはタイミングが合えばイルカが群れで寄り添って泳いだり、並走したりする様子を観察できる。まれに船に興味を示して近づいてきたり、大きくジャンプしたりする姿も見られた。
 東海大海洋学部の大泉宏教授(海洋生態学)によると、清水港にすみ着いているのは6頭のミナミバンドウイルカ。群れが清水港をどのように利用しているのか調査を続けている。イルカ類は背びれの形や傷痕を手掛かりに個体を識別できることから、どこからやってきたかなども調べている。大泉教授は「野生のイルカなので船で追い掛けたりせず、そっと遠くから観察をしていただければ」と呼び掛ける。
 同社営業部の稲垣忠明部長は「イルカに出会えたときは心の底から感動する。これからも長く共存できるように優しい運航を続けていきたい」と話した。

カモメと触れ合い 至近距離で迫力の餌やり

 清水港にユリカモメの群れが飛来し、港内を遊覧するクルーズ船からの餌やりが人気を集めている。3連休初日の7日は多くの親子連れが訪れ、富士山清水港クルーズが運営するベイプロムナード号に乗船しながら、「ギューイ」と鳴きながら至近距離に寄ってくる体長40センチほどのカモメたちに手移しでの餌やりを楽しんだ。

船上からカモメの餌やりを楽しむ親子連れ=清水港
船上からカモメの餌やりを楽しむ親子連れ=清水港

 同社によると毎年11月ごろから3月末ごろまでカムチャツカ半島などからカモメが訪れる。例年1月ごろが飛来数のピークとなるという。沼津市から父母ら家族と乗船し、船内で100円の餌を買ってカモメと触れ合った露木蓮大君(7)は「カモメの顔がかわいかった。初めての体験で楽しかった」などと感想を話した。
 清水港にはユリカモメの他にもハクチョウなどの大型の鳥類が訪れていて、運が良ければクルーズ船の近くに来るのを見ることができる。ミナミバンドウイルカの群れなど、港内では現在多様な生き物が見られる。3連休最終日の9日まで連日花火の打ち上げも行われ、同社では「冬の清水港花火ナイトクルーズ」のチケットも販売している。
(清水支局・坂本昌信)
〈2024.01.08 あなたの静岡新聞〉

訪日クルーズ3年ぶり再開

  新型コロナウイルスの影響で停止していた清水港の国際クルーズ船の受け入れが(2023年)3月1日から約3年ぶりに再開されることが、3日までの関係者への取材で分かった。3月は6件の寄港予約があり、県や静岡市、保健所などでつくる清水港安全対策協議会が近く、正式に受け入れを認めるとみられる。外国の船会社の運航受け入れ再開は、全国で清水港が初となる。

2013年に清水港に寄港したクルーズ船「アマデア」。受け入れ再開初日も歓迎イベントを開催する予定
2013年に清水港に寄港したクルーズ船「アマデア」。受け入れ再開初日も歓迎イベントを開催する予定
 国際クルーズ船は、横浜港に寄港していた大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」で新型コロナの集団感染が発生したことを機に、2020年3月以降、受け入れを停止していたが、昨年11月に国土交通省が再開を表明した。
 関係者によると、3月1日に寄港するのはドイツの会社が運航する「アマデア」(旧飛鳥)。清水港客船誘致委員会は来港に合わせた歓迎イベントを計画中で、市も港のにぎわい創出に向け船の見学を市民に呼びかける。
 運航再開を前に、船会社などでつくる業界団体や日本港湾協会はそれぞれガイドラインを作成した。業界団体は乗船前の検査や健康観察の実施、船内で感染者が出た場合の隔離の徹底などを規定。受け入れる港湾側も、岸壁の感染対策やターミナルビル従業員の健康管理などをするよう定めている。
(政治部・池谷遥子)
〈2023.02.04 あなたの静岡新聞〉
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