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山口・周防大島 陽光注ぐ瀬戸内のハワイ【光もとめて③】

 瀬戸内海に浮かぶ山口県・周防大島は、一年を通じて温暖な気候に恵まれ、「瀬戸内のハワイ」との呼び名もある。さんさんと降り注ぐ陽光を浴びようと島を訪ねた。

嵩山から眺めると、島々の向こうにうっすらと四国が見えた
嵩山から眺めると、島々の向こうにうっすらと四国が見えた
「O―KUN」の看板メニューの「クイティウ」(右)と「サイモアン丼」。辛さや地元産パクチーの量は選べる
「O―KUN」の看板メニューの「クイティウ」(右)と「サイモアン丼」。辛さや地元産パクチーの量は選べる
山口 周防大島
山口 周防大島
嵩山から眺めると、島々の向こうにうっすらと四国が見えた
「O―KUN」の看板メニューの「クイティウ」(右)と「サイモアン丼」。辛さや地元産パクチーの量は選べる
山口 周防大島

 有人、無人の島々からなる周防大島町。岩国錦帯橋空港(山口県岩国市)から車で南へ約1時間、全長1020メートルの大島大橋を渡って本島へ渡る。橋の上からは小ぶりな島々や行き交う船が見える。穏やかな瀬戸内海らしい風景だ。
 まずは美しい景色を拝むべく標高約619メートルの嵩山[だけさん]に登る。山頂の駐車場から遊歩道を歩くとすぐに展望テラスに着いた。島の東南方向を眺めると、大小の島々が浮かぶ瀬戸内海の「多島美」の絶景が広がる。空と海、木々が織りなす鮮やかな色彩に圧倒された。
 「周防大島は“星”もきれいに見られるんです」と、周防大島観光協会の江良正和事務局長。時計を見ると正午。さすがに真っ昼間から星は見られないだろうと思いつつ、薦められた海岸へ向かうと、ヒット曲「三百六十五歩のマーチ」や映画「男はつらいよ」のテーマ曲などの作詞を手がけた故星野哲郎さんの出身地、和佐地区の「星のビーチ」に着いた。
 海岸の突堤には、星形の風向計のモニュメントが立つ。目の前に真っ青な瀬戸内海をのぞむ写真映えスポットとして観光客らに人気といい、黄色のモニュメントに近づくと、陽光が反射した海面がきらきらとまぶしい。確かに、日中の“星”も美しい。夜は本物の天の川が見られるという。
 周防大島は明治時代に約4千人が米ハワイに渡った。1963年には米ハワイ州カウアイ島と姉妹島提携を締結。景観の美しさに加え、長い交流の歴史も「瀬戸内のハワイ」と呼ばれるゆえん。島東部の「片添ケ浜海水浴場」は、白い砂浜や揺れるヤシの木々が南国を思わせるリゾート地だ。砂浜にぼんやりたたずむと優しい波の音に心が洗われる。
 近年は島に移住する人も多い。海岸沿いに昨年オープンしたカンボジア料理店「O-KUN」を営むリム・ピセイさんは、2016年から、日本人の妻の祖父母宅がある周防大島で暮らしている。「美しい自然や海が身近にある暮らしに引かれました」と、人懐っこい笑顔で話す。
 店の看板メニュー、米粉の麺料理「クイティウ」は豚骨スープの優しい味で、鶏肉をショウガと炒めた「サイモアン丼」は甘めの味付けがおいしい。トッピングのパクチーは周防大島産だ。「香りがすごく良いでしょう?」とピセイさん。島への愛が感じられた。
 帰途、道の駅「サザンセトとうわ」に向かった。道の駅の裏に広がる海の沖合に小さな「真宮島[しんぐうじま]」が浮かんでいる。数時間前に立ち寄ったときは海だったところに、砂の道が現れていた。
 砂の道の途中でふと立ち止まり、周囲を見回すと、太陽がもう沈みかけている。オレンジ色の夕日に染まる周防大島に後ろ髪を引かれながら、島を後にした。

 【メモ】真宮島に歩いて渡れるのは干潮の前後数時間だけ。

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