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社説(4月18日)衆院3補選始まる 政治改革へ具体策示せ

 東京15区と島根1区、長崎3区の衆院3補欠選挙が告示され、いずれも選挙戦に突入した。自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、国民の政治不信が深まる中、政治改革が3補選共通の焦点になるのは間違いない。
 ところが自民党は二つの選挙区に候補者を立てられなかった。政権与党としてあまりにふがいない。公認候補を立てた島根1区で敗れれば、岸田文雄首相は政権への最終警告と受け止めるべきだ。
 9月の党総裁選で再選を目指す首相だが、仮に島根1区を落として「全敗」した場合、党内に「岸田首相では選挙を戦えない」との空気が広がり「岸田おろし」が始まる可能性もある。自民が議席を確保するには、その政治改革に一定の支持を得ることが必須だ。与野党が政治資金規正法改正の中身など改革の具体策を競い合い、有権者の審判を仰がなければならない。
 3選挙区はいずれも自民が議席を有していたが、東京15区は江東区長選での買収など公選法違反事件による議員辞職、島根1区は前衆院議長の死去、長崎3区は裏金事件での議員辞職により補選となった。自民は「政治とカネ」を巡る不祥事で議席を失った東京と長崎では勝てないとみて、惨敗するよりも不戦敗のほうが政権への打撃が少ないと判断したのだろう。立民との一騎打ちになった島根1区は保守王国と言われるが、今回は苦しい戦いを強いられているという。
 裏金事件をはじめとする不祥事が今の状況を招いたことは確かだ。ただ、支持率が自民の政権復帰以降の最低水準に落ち込んだまま回復しないのは、事後対応でも国民の怒りを買ったからだろう。
 党による裏金事件の調査は中途半端で、真相解明には程遠い。安倍派議員を中心に39人を処分したものの、処分基準が曖昧な上、派閥の会計責任者や秘書が有罪になった岸田首相と二階俊博元幹事長は処分の対象から外れた。抜け道が多いと批判されている規正法の抜本改正にも、熱意は感じられない。これでは国民の支持が離れるのも無理はない。岸田首相と自民の政治改革への姿勢が変わったと国民が実感できなければ、支持率アップは望めまい。
 一方、野党も自民から離れた支持層の受け皿になりきれていない。岸田首相が6月までの今国会中に衆院解散・総選挙に踏み切る可能性も取りざたされている。3補選を次の総選挙の前哨戦ととらえるなら、野党側も連座制導入や政策活動費の廃止などを主張している政治改革だけではなく、経済対策などで幅広い国民の支持を取り付けなくてはならない。“敵失”による勝利だけでは政権交代は難しい。

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