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社説(5月1日)出生率の低下 社会構造変える施策を

 厚生労働省は2018~22年の市区町村別の合計特殊出生率を発表した。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数の5年間平均を算出し、静岡県全体は1・39、全国平均は1・33だった。
 県として全国をやや上回っているとはいえ、人口維持に必要とされる水準2・07には程遠いばかりか、低下に歯止めがかからず、危機的な状況を脱する見通しは全く立たない。人口動態統計に基づく県の合計特殊出生率は15年にかけてやや上昇したものの、16年以降は下落が進み、最新の22年は1・33まで落ち込んでいる。
 少子化の進行は国全体の問題として捉えることが大前提だとしても、県としてどう向き合い、対策を講じるべきかという観点が欠かせない。その意味で5月9日告示、26日投開票の知事選は、本県の少子化対策について議論を深める重要な機会だ。候補者同士の活発な論戦を期待したい。
 5年平均の合計特殊出生率を県内市町別に見ると、最高は長泉町の1・67。上位は菊川市1・58、浜松市(旧)東区と袋井市1・56などが続く。最低は熱海市1・06で、浜松市天竜区1・17、東伊豆町1・22、伊東市1・23などが低かった。若い女性が東京など都市部に転出し、定着しないことが本県の少子化を加速させている。「子育ての町」をうたう県内最上位の長泉町を含め、合計特殊出生率低下と出生数減少が進行していることに変わりはなく、現状を深刻に受け止めねばならない。
 政府は「異次元の少子化対策」として、児童手当の拡充や育児休業給付の充実などに取り組み、3年間の集中期間に子ども政策の予算を年最大3兆6千億円投入する方針を打ち出した。だが、これらは子育て世代が抱える課題の解決にはつながっても、これから子どもを持とうとする世代への効果が見通しにくいとの指摘がある。結婚しない人の増加、若者の恋愛離れが少子化につながっている側面もあり、要因は多岐にわたる。
 政府が「こども未来戦略」で挙げているように、若年層の経済的支援とともに、社会全体の構造や意識を変える必要がある。長時間労働を是正し、男性も育児休業を取りやすくするなどの働き方改革を進めねばならない。
 県でもこれまで、各市町の合計特殊出生率に影響する要因を分析した冊子「ふじのくに少子化突破戦略の新・羅針盤」の作成をはじめ、子育て世代の支援や若年層の出会い・結婚サポート、仕事と家庭の両立の後押しなど、多くの対策を打ち出している。こうした施策がどのように効果を上げているか、知事選を機に改めて検証し、実効性を高めていく必要がある。

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