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社説(5月9日)2024選択 知事選 きょう告示 県の未来像示し論戦を

 新規採用職員への訓示で職業差別と取れる発言をして辞職する川勝平太氏の後任を決める静岡県知事選が、きょう告示される。4期15年続いた川勝県政は終焉[しゅうえん]を迎え、新たなリーダーの下での県政がスタートする重要な転換点だ。既に新人6人が出馬表明し、26日の投開票に向けた選挙戦に突入する。353万人が暮らす本県をどのような未来に導くのか、候補者の訴えにしっかりと耳を傾けて最もふさわしい人物を選びたい。
 川勝氏の突然の辞職により前倒しで行われる知事選だ。有権者は短期間で一票を託す候補者を選ばねばならない。本県には、深刻な人口減少への対策や、構造転換が急務の経済振興策、リニア中央新幹線工事への対応など重要課題が山積している。
 これらにどう取り組み、解決していくのか。候補者は有権者に向け、分かりやすい言葉で丁寧に語ることが求められる。
 6人は、自民党推薦の元副知事大村慎一氏(60)と立憲民主党、国民民主党推薦の前浜松市長鈴木康友氏(66)、共産党公認の党県委員長森大介氏(55)、政治団体「個人の尊厳党」代表横山正文氏(56)、アパート経営村上猛氏(73)、会社社長浜中都己氏(62)。
 推薦・公認を出した政党を見ると、与野党対決の選挙と見ることもできる。だが、大村氏と鈴木氏は出身地の地域性も絡んでどちらも支持基盤が一枚岩とは言い難く、各党支持層の投票行動を測りかねる部分がある。リニア問題では、大井川の水や南アルプスの環境を巡る課題を解決して事業を推進する姿勢の大村、鈴木両氏と、建設反対の森氏の主張が有権者にどう受け入れられるか見通せない。
 岸田文雄政権の支持率が自民の政権復帰後の最低水準に低迷する中で与野党対決の構図になったことや、リニア問題への影響が必至であることから全国的に注目を集める知事選になる。だが、県民にとっては与党か野党か、リニア推進か反対かの単純な二者択一で投票先を決められる選挙ではなかろう。論戦に注意深く耳を傾け、だれの主張に説得力があるのか、県勢の発展に資する人材はだれなのかを慎重に見極める必要がある。
 6人の中で出馬表明が早かった大村、鈴木、森の3氏は既に自らの政策を発表し、討論会などで所信を語ってきた。大村氏は平時から災害発生時まで切れ目のない防災対策の推進を強調し、鈴木氏は企業誘致やスタートアップ企業の支援など産業振興に力点を置くと表明。森氏はリニア建設や浜岡原発再稼働への反対、最低賃金引き上げなどを掲げる。選挙戦を通じて有権者の声を一層吸い上げ、政策を磨いてもらいたい。
 川勝県政では、知事と県議会で多数派を占める自民党会派との対立が県政の停滞を招いた。知事の不適切発言を巡って辞職勧告決議案や不信任案が提出されるなど混乱し、本来は県政課題を議論すべき時間が政争に費やされた。次の知事は仮に政治的対立があっても、対話を通じ政策を前進させられる政治力が求められる。自らの発言で政争の種をまくようなことは決して許されない。議会側も川勝県政での反省を踏まえ、選挙後に無用な対立を持ち越すことがあってはならない。
 知事選の投票率は川勝知事が初当選した2009年は約61%だったが、以降は50%前後で推移してきた。自民派閥の裏金問題で生じた政治不信が、今回選に影響しないか懸念される。候補者の活発な議論が有権者の関心を掘り起こすことを期待したい。特に若い世代は、自分の未来を選ぶ選挙でもあると認識して必ず投票所に足を運んでほしい。

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