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大自在(4月7日)商鞅

 中国・戦国時代の政治家、商鞅[しょうおう]は秦の孝公の信を得て取り立てられ、宰相として国政改革に辣腕[らつわん]を振るった人物。旧来の貴族層が持っていた特権を廃して中央集権化を進め、法治主義の政治体制を整えた。
 当初は新たな法に民衆からも不満の声が上がったが、貴族でも法に基づいて厳しく罰することで受け入れられ、秦の富国強兵を進めた。前漢の歴史書「戦国策」には商鞅の政治について「罰は強大を諱[い]まず(罰は有力者に対しても遠慮なく行われた)」と記されている。
 改革で貴族層の恨みを買った商鞅は、孝公が没すると罪を着せられて車裂[ざ]きの刑に処せられた。しかし、法治が根付いた秦は弱小国から一大強国に発展。約100年後の始皇帝による中国統一の礎になったとされる。
 一方、自民党が派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で関係議員を対象に行った処分。処分を受けた議員から不満が噴出しているだけでなく、党の内外に批判が渦巻いている。
 総裁として党全体の責任を負っているはずの岸田文雄首相や、政治資金収支報告書に巨額の不記載があった二階俊博元幹事長へのおとがめはなし。さしずめ「罰は強大をはばかる」と言ったところだろう。
 首相は党内の反発を押し切って処分することで、政権や党への逆風を和らげる狙いだっただろうが、裏金事件の真相解明は中途半端、処分の基準は曖昧―では国民の理解を得るのは困難だ。自らの責任について「最終的に国民に判断していただく立場」と開き直った首相。その「判断」を甘く見ていなければいいが。

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