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社説(8月26日)一茶生産過去最低 茶業団体も改革気概を

 農林水産省によると、今年の主産5府県の一番荒茶生産量は前年比7%減の2万1千トンで過去最低となった。首位静岡は前年比14%減の9060トン。2位鹿児島は4%増の8440トンで差が縮まった。
 大型連休ごろ盛期となる県内一茶は30年ほど前は2万トン超が生産された。この間県内茶園面積はほぼ半減し、茶農家は4万戸から6千戸に、一茶の平均価格は1キロ当たり3千円前後から2千円を割るまでになった。これらの構造的要因に加え、今シーズンは4月以降の低温が生葉収穫量に響いたとされる。
 緑茶ドリンクの台頭や贈答需要の不振で、急須で入れる新茶・一番茶の「危機」が言われて久しい。これを転機と捉えられるかどうかが日本茶業持続化の鍵を握る。
 茶農家、茶商の中には早くから気付き、手摘み体験やネット通販で消費者と直結したり、商品開発に挑んだりしている人がいる。今が好機と意欲的な新規参入者もいる。
 社会や暮らしの変化に乗り遅れてはならないのは、後方の茶業団体も同じである。中でも、県内茶業界を代表する静岡県茶業会議所(上川陽子会頭)には、改革を先導する気概を見せてもらいたい。
 県茶業会議所は1958年、茶業近代化のため生産者と商工業者の融和を図ろうと設立。県当局と連携して消費拡大など振興策に取り組み、農薬や産地表示といった消費者問題にも対応してきた。
 会議所は「茶業振興費」を主要財源に運営される。取引実績などに応じ、構成団体であるJA静岡経済連と県茶商工業協同組合を通して徴収。静岡茶市場での取引からも徴収する。かつて3億円以上あった時期もあるが、業界低迷により近年は6千万円前後に減収となった。
 振興費収入が減少一途なのに毎年同じような事業を繰り返していては、財務は硬直化。会議所の存在意義の再確認と事業見直しが不可避になる。
 会議所や静岡茶市場がある静岡市中心部の茶問屋街には県内外から荒茶が集まり、製茶されて全国に発送される。商材としての茶にとどまらず、茶を巡る人、情報の集散地であり続けてほしい。
 会議所は2003、04年度に検討委員会を設置して自身の「在り方」を探った。だが茶葉を急須で入れて飲む消費者層の開拓は道半ばと言わざるを得ない。1世帯当たりの茶への支出額は07年以降、茶ドリンクが茶葉を上回る。
 一方、女性の社会進出や商品・サービスの多様化とともに「お茶ファン」が予備軍を含め少なくないことがアンケートなどで分かってきた。会議所の「在り方」の検討にまた踏み出すのに、初の女性会頭の今は好機ではないか。

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