テーマ : お茶・茶況

時論(8月27日)多様性は葉っぱの茶にこそ

 煎茶、ほうじ茶、ウーロン茶、紅茶、ジャスミン茶…。コンビニの冷蔵ケースに並ぶ「お茶」。プライベートブランドが低価格でひと通りそろい、ナショナルブランド商品も複数種が棚をにぎわす。
 これを「多様性」と言っていては短絡的と批判されるかも。客の好みに応え、必然的にこの品ぞろえになったのだろうから。
 先日、都内にある茶と関連商品の小売店が行った店頭イベントの話を聞いた。この店は「ペットボトルのお茶を主に飲む人が日本茶の茶葉の家庭内消費に一歩踏み出すための店」がコンセプト。葉っぱの「リーフ茶」の“持ち味”アピールには、価格差がある煎茶の上中下の飲み比べより、同一価格の煎茶、ほうじ茶、和紅茶の飲み比べのほうが好評だったという。
 家計の茶への支出で茶系ドリンクがリーフ茶を上回って15年ほどになる。ペットボトルの手軽さ、リーフ茶の味わい、どちらも長所がある。しかし、多様性は間違いなくリーフ茶が勝る。
 茶は摘採されるとすぐに茶工場で蒸され、揉まれて荒茶になる。茶市場などで取引され、製茶問屋がブレンドや火入れなど仕上げ加工して商品に。栽培、荒茶加工、製茶の各段階で、小規模だからこそ個性的で高い技術を継承してきたのが静岡茶業といえる。
 ことしの全国茶品評会で、県勢が普通煎茶4キロ、深蒸し煎茶の部で日本一に輝いた。一茶生産量が前年比14%も減って過去最低になる中、底力を見せてもらった。中山間地の個人経営茶農家の健闘は、リーフ茶の多様性をアピールするのにもってこいの話題だ。
 葉っぱのお茶の世界にも目を向けてほしい。どちらもドリンク愛飲者に届けたいニュースである。
 (論説副委員長・佐藤学)

いい茶0

お茶・茶況の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞