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政党 与野党 地域浸透に濃淡【静岡知事選 集票の行方㊦】

 知事選が告示された9日夕のJR沼津駅北口。元副知事大村慎一氏の県東部出陣式に12市町の首長が並び立った。「将来のために東部・伊豆が団結すべきだ」。菊地豊伊豆市長が呼びかけると、会場は熱気に包まれた。

候補者の演説に耳を傾ける聴衆。政党の動向が集票にどう影響するか注目される=9日、浜松市中央区
候補者の演説に耳を傾ける聴衆。政党の動向が集票にどう影響するか注目される=9日、浜松市中央区

 副知事や総務官僚として連携してきた市町との関係をアピールするだけでなく、『オール静岡』を印象づけて自民色を薄める―。自民関係者は首長による支持表明の効果を強調するが、集票につながるかは未知数だ。
 「大村氏を支える一つのグループ」と訴えつつ、事実上、選挙戦を取り仕切る自民。超短期決戦による知名度不足を克服するため、上川陽子外相(衆院静岡1区)が応援に入るなど組織力で攻勢をかける一方、党本部からの大物弁士は極力控える戦略を取る。脳裏によぎるのは、岸田文雄首相らが連日現地入りしたにもかかわらず全敗した4月の衆院3補欠選挙。大村氏への党本部推薦も「プラスどころかマイナスでは」と懸念が広がる。
 最大の課題は県西部での浸透だ。ものづくり再興など新たな政策を打ち出し、中東遠の元首長らが支援に奔走するが、大票田の浜松市で手足となる県議や市議の多くは身動きがとれず、自民会派の最古参柳川樹一郎市議は元浜松市長鈴木康友氏の出陣式でマイクを握った。足並みの乱れが改めて露呈し、県連関係者は「想像以上に溝が深い」ともどかしさを募らせる。
 他党との連携でも目算が外れた。頼みの公明党は自主投票を決め、日本維新の会も大村氏の推薦を見送った。
 一方、鈴木氏陣営は県議会会派ふじのくに県民クラブを中心に、立憲民主、国民民主両党県連、連合静岡が選対を支える。政治経験が豊富な鈴木氏だが、全県選挙は初めて。「天竜川より東は浸透していない」。陣営は危機感を共有し、東部、中部で重点的に活動を展開する。
 自民とは対照的に、立民は告示日の野田佳彦元首相を皮切りに続々と応援弁士を投入。19日には泉健太代表が応援に立つ。国民の玉木雄一郎代表も同日、県内入りする予定だ。立民県連幹部は「国政と県政は別」としながらも、「衆院3補選の勢いを知事選、次期衆院選につないで党勢を拡大したい」と本音を漏らす。
 ただ、立民、国民両党県連の基盤は脆弱(ぜいじゃく)で機動力は実質的に会派や連合頼み。寄り合い所帯だけに、一枚岩とは言えない実情もある。陣営関係者は「時間がなく、候補者の訴えや見せ方までをきちんと練り上げられていない」と課題を口にし、終盤戦へ引き締めにかかる。
 共産党県委員長森大介氏を擁立した党県委員会は、知事選を党勢拡大の重要な機会と位置づける。年内にも予想される衆院解散を視野に入れ、次期衆院選立候補予定者と連動した選挙戦を展開する。
 (知事選取材班)

 立候補者 上から届け出順
 横山正文 56 諸新
 森大介 55 共新
 鈴木康友 66 無新(立民、国民推薦)
 大村慎一 60 無新(自民推薦)
 村上猛 73 無新
 浜中都己 62 無新
 ※諸は諸派、共は共産、無は無所属。敬称略。

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