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小林製薬 紅こうじ問題 社長「死者出ると思わず」 危機意識欠如 あらわ 公表に2カ月 会見歯切れ悪く【表層深層】

 小林製薬による「紅こうじ」サプリメントとの関連が疑われる死者は5人、体調不良を訴えた人は800人規模に膨れ上がった。2度目となる29日の記者会見では、小林章浩社長が症状を把握した当時を振り返って「死者が出るとは思わなかった」と明かすなど、危機意識の欠如があらわになった。食品の安全性に対する不安拡大に政府関係者は頭を抱えた。

記者会見で謝罪する小林製薬の小林章浩社長(中央)ら=29日午後、大阪市
記者会見で謝罪する小林製薬の小林章浩社長(中央)ら=29日午後、大阪市
小林製薬の問題点
小林製薬の問題点
記者会見で謝罪する小林製薬の小林章浩社長(中央)ら=29日午後、大阪市
小林製薬の問題点


 29日に大阪市で開かれた記者会見は4時間半に及んだ。被害の把握から公表まで約2カ月かかった対応のまずさや、原因物質の可能性が浮上した青カビ由来の「プベルル酸」に質問が集中した。
 小林製薬は1月15日に医師からの連絡で症状の発生を確認した。原因究明に時間を要した結果、公表が3月22日にずれ込んだ。小林社長は2月6日に事態を把握したが、その時点では「何が混入しているのか、サプリと患者の症状との関係が全く分からなかった。死者が出るとは想定できなかった」という。
 記者からは「少しでも早く使用停止を呼びかけられなかったのか」という質問が何度も飛んだ。それでも小林社長は「未知の成分が検出されたことを示す分析結果がそろった、3月18日にしか決められなかった」と繰り返し、歯切れの悪さばかりが目立った。

 ▼任せられない
 厚生労働省が健康被害の情報を把握したのは、22日夕に小林製薬が事態を公表するわずか4時間ほど前だった。その後も十分な内容が提供されないまま26日午前に初の死亡事例が発表され「省内の危機感のフェーズが変わった」(同省幹部)。
 その日の午後、同社担当者を急きょ大阪から呼び寄せてヒアリング。大阪市に対し、廃棄命令などの措置を取るよう深夜に通知する異例の対応を取った。原因物質の特定作業は今後、国の研究施設で進める方針だが、厚労省幹部は「表向きの理由は小林製薬の分析結果をダブルチェックするため。実際は、小林製薬には任せていられない面もある」と明かす。
 紅こうじサプリが、商品数が急増している「機能性表示食品」だったことも、制度全体への品質不安につながった。制度を所管する消費者庁は、報告が遅れた小林製薬の対応を問題視。担当大臣や長官が口をそろえて「対応は誠に遺憾」「安全性への疑念を抱かせる深刻な事案だ」と繰り返した。
 一方、担当者は「機能性表示が事業者に甘いという指摘は昔からあった。問題が起こる前に、定期的に被害情報の有無をチェックするなどのアプローチもできたはずだ」と自省する。

 ▼いら立ち
 岸田政権は、健康被害の広がりに危機感を強めている。対応が後手に回った印象を与えれば、内閣支持率の低迷から抜け出せなくなる恐れがあるためだ。官邸筋は「この問題はしっかり処理する。政権の政策遂行能力が問われる局面だ」と力を込める。
 29日には問題発覚後、初めて関係閣僚会合を首相官邸で開催した。これまで事務レベルだった会議体を閣僚レベルに格上げし、対応を本格化させる。政権幹部は小林製薬に対し「自社の商品で健康被害が出たと分かった時点で報告するのが当たり前だ。社内の体制はどうなっているのか」といら立ちを隠さなかった。

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