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千奈ちゃん「バス来てるよ」車内で声も 前園長は気付かず施錠【牧之原置き去り死初公判】

登園前に笑顔を見せる生前の河本千奈ちゃん=2022年6月中旬、牧之原市内(遺族提供) 「ケーキバス、後ろから来てるよ」-。静岡地裁で23日に開かれた牧之原市の送迎バス園児置き去り事件の初公判。検察は冒頭陳述で、河本千奈ちゃんがバスに取り残される直前、別の送迎バスの存在に気付き、車内で声を上げていたことを明らかにした。そのとき車内には千奈ちゃんと運転席の園長だけ。その言葉は園長に向けられていたのだろうか。しかし、増田立義被告(74)はその声に気付くことなく、バスを施錠。増田被告は最後に車内を確認しなかったことについて「補助員がスライドドアを閉めたので、いないと思った」「(私用で)先を急いでいた」などと語った。
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 上下黒色のスーツに黒いネクタイ姿で初公判に臨んだ増田被告。上下黒色のスーツに髪を一つに結んだ元クラス担任の被告(48)と入廷し、被告側の席に並んで着席した。静岡地裁に入る増田立義被告=23日午前8時45分ごろ、静岡市葵区
 検察は冒頭陳述で、事件当日の2022年9月5日朝、車内に残された千奈ちゃんが別の送迎バスの通称「ケーキバス」が近づいてくるのに気付き、「あっ、ケーキバス」「後ろから来てるよ」と声を上げていた新事実をドライブレコーダーの音声を証拠に指摘。千奈ちゃんの声に増田被告が気付くことはなく、約200メートル離れた駐車場にバスを移動させて施錠したーと主張した。「バスの中からは登園時に被害者(千奈ちゃん)が実母にほぼ満タンに麦茶を入れて持たせてもらった水筒が空の状態で発見された」。担当検事は千奈ちゃんが懸命に生きようとした〝証拠〟も述べ、約15分間の冒頭陳述を終えた。
 「千奈はどうすることもできずに亡くなった。千奈の気持ちを考えたことはあるか」。被害者参加制度を利用して出廷した千奈ちゃんの父親(39)は感情を押し殺し、増田被告の認識などを淡々とただした。事件2日後の記者会見で増田被告が千奈ちゃんの名前を間違えていたことに触れ「本当に園児を大切にしていたか」と質問。増田被告は名前を間違えたことをわびた上で、「千奈ちゃんとは一緒に昼食を食べたことが数回あった」と述べた。父親が「それが答えですか」と改めて問うと、増田被告は「はい」と答えた。
 増田被告は法律で策定が義務づけられている学校安全計画を策定していなかったことについては「いずれ作ろうと思っていた」「自分が入院していて、コロナで園も休んでいたので延び延びになっていた」と述べた。弁護士にどうすれば事件を防げたか問われると、「早く園長を辞めるべきだったと思う」と語った。
 初公判は予定時刻を約25分過ぎて閉廷した。被告人質問が第2回公判に持ち越された元クラス担任の被告は終始、目線を下げたままだった。

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