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【経済サプリ】米中関係、日中に強く影響(柯隆/静岡県立大特任教授) 

 2023年11月、米サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した中国の習近平国家主席はバイデン米大統領と会談した。この会談で両首脳は両国の対立が激化するリスクを管理するために対話を続けることに合意した。
 今年に入ってから、米中政府高官の会談は相次いでいる。最近、イエレン財務長官は中国を訪問し、李強首相をはじめとする中国政府高官と対話した。イエレン氏は会談後、米中関係が改善していると明言し、対話の成果を強調した。
 イエレン氏の発言をどのように受け止めたらよいのだろうか。少なくとも米中両政府はいずれも関係のさらなる悪化を望んでいないことが明白である。対話を通じて関係の悪化を食い止めたい気持ちが滲(にじ)んできている。しかし、米中の間に横たわっている難題はほとんど解決されていない。
 イエレン氏が中国で同国の過剰設備の問題を提起し、中国政府による補助金制度が世界経済に深刻な影響を与えかねないと指摘した。米国にとって中国に提起しなければならない安全保障にかかわるもっと深刻な問題があるが、中国政府に配慮して、最も話しやすい輸出製造業の補助金に関する問題を提起したのはイエレン流といえる。
 米中関係の今後の展望について最も心配されるのは、米大統領選にトランプ前大統領が当選した場合、中国に対して、もっと重い制裁関税を課すことである。それは中国に影響を与えるだけでなく、中国に進出している日本企業に影響を与えかねない。
 中国政府が「戦狼外交」の姿勢を軟化させたのは中国経済が内需不足に悩まされているからである。内需不足に加え、外需がこれ以上弱くなると、中国経済は李氏が掲げた5%前後の成長目標を達成できない可能性が高くなる。
 日本にとって悩ましいことだが、中国と完全にデカップリング(切り離し)をすること、すなわちゼロチャイナはできないが、いかにウィズチャイナを続けるかをしたたかに考えないといけない。これからの日中関係は米中のはざまで翻弄(ほんろう)されないよう、日本独自の戦略を打ち出すことが重要である。

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