テーマ : 経済しずおか

社説(5月7日)企業倒産3割増 雇用悪化対応の充実を

 新型コロナウイルス感染拡大への対応で、政府が企業に対し続けてきた資金繰り支援への返済が本格化する中、中小零細を中心に倒産する企業の数が拡大している。この夏を境に事業継続を断念する企業が、さらに増加するとの懸念も指摘されている。
 こうした動きに伴う雇用状況悪化への対応や、事業再生に向けた取り組み支援などが、行政をはじめ関係機関には求められる。
 信用調査会社の東京商工リサーチによると、2023年度の企業倒産(負債額1千万円以上)の件数は全国で前年度比31・6%増の9053件と9年ぶりの水準となった。
 静岡県内も同社静岡支店が、23年度は企業倒産が210件(6件増)と2年連続で前年度を上回ったとした。新型コロナウイルス関連の破綻が減少した一方、原材料やエネルギー価格の高騰が響いたという。
 政府は7月以降、各種資金繰り支援制度を「コロナ禍前の水準」に戻す方針とされ、事業継続が厳しくなる企業が、中小零細企業を中心に増える懸念がある。
 一方で、県内大手企業は輸送用機械を中心に、生産活動が堅調に推移している。静岡経済研究所によると、県内企業の2024年度の国内設備投資計画額は前年度比で6・5%増。コロナ明けの業績好転を背景に、生産能力の増強や新製品開発に向けた前向きな姿勢が見られるという。
 今年の春闘でも、大企業は労働組合からの賃上げ要求に対し、相次いで満額回答を出している。
 帝国データバンクが4月に実施した24年度の賃上げ実績アンケートでは、連合が掲げた目標の「5%以上」に対し、賃上げを達成した大企業は全体で8割近くに及び、賃上げの裾野が広がった。
 大企業のこうした賃上げの動きが今後、中小零細企業や消費活動全体につながってくるならば、中小零細企業の経営継続や、雇用状況回復の好循環に続くことが期待できよう。だがアンケートによると、中小企業を中心に7割が「5%以上」の要求に届いていないと回答している。
 物価の上昇分を価格転嫁できないまま、賃上げに踏み切る中小零細も少なくない。調査によれば、県内企業の価格転嫁率は42・4%にとどまる。コスト上昇分の約6割を下請け企業などが負担している計算とされる。
 政府は昨年11月、価格転嫁のための指針を発表し今春、取り組みを強化した。中小零細企業から製品を購入している大企業に対し、中小からの値上げ交渉に応じるよう求めている。特に大企業による不当な購入価格の据え置きは監視も強めていきたい。

いい茶0

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞