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静岡鉄道 キャリア追求できる職場に【しずおか企業探訪~経営とD&I~⑩】

 「女性に優しい職場」と聞いて、どんな職場を思い浮かべますか?
 女性にはきつい仕事を任せない職場や、育児をしやすい職場でしょうか。こうした職場には性別役割意識が根底にあり、女性の適切な能力開発が行われていないことが少なくありません。成長の機会が与えられなければ仕事へのモチベーションを抱けず、キャリアアップも視野に入りません。「女性だけが育児をしやすい職場」ではなく「性別にかかわらず、育児をしながらでもキャリアを追求できる職場」こそが、真のダイバーシティが実現された職場なのです。
 静岡鉄道の近年の施策には、真のダイバーシティを目指す意気込みが見えます。同社は2023年度から女性登用を本格化し、24年4月時点の女性管理職比率は17%。目標を前倒しで達成しました。さらに23年度は、2人の育児中の女性が登用されました。2児を育てる人事部人財育成課長の剱持瑞恵さんは後輩の女性社員から「育児と両立中でもキャリアアップができると示してくれてうれしい」と言われたそうです。また、男性の育児休業取得を推進するなど、性別に縛られない人事施策を行っています。
 同社のダイバーシティ支援は、ジェンダーギャップの解消が柱の一つです。静岡県にはフルタイムで働く男女の賃金格差が大きいという課題があります。その主要な原因の一つは、管理職や賃金の高い職種(技術職など)に女性が少ないことです。
 そこで、同社は女性が育児をしながらキャリアアップできる体制を整えることに注力しました。例えば、出産後に早期復職した人やフルタイム勤務に戻した人に手当を支給し、応援する制度があります。長期にわたる育休や時短勤務制度の利用は、キャリアにネガティブな影響があります。そのため、こういった制度は海外や首都圏の企業で少しずつ増えていて、県内では先駆者と言えるでしょう。
 同時に、両立しながら働くためのサポートは手厚くしています。例えば、時間単位有休である子の看護休暇は小学校卒業まで利用でき、育休中に受講できる両立支援プログラム(育休プチMBA)も福利厚生に組み込んでいます。
 人事部長の清水寛人さんは「今後は業界や地域社会の慣習を変えるための働きかけも視野に入れたい」と話しています。ぜひダイバーシティ&インクルージョンの先進企業として、静岡の景色を変えてほしいと思います。

ポイント
 ・育児支援ではなく、育児とキャリアの両立支援
 ・これからの世代が希望を持てる職場環境の整備

【静岡鉄道】静岡市葵区。県中部を基盤に、交通事業をはじめ不動産、ホテル、レジャーなど幅広い事業を展開。サステナブル(持続可能)な地域社会への貢献と企業価値の向上に努めている。
 (国保祥子・静岡県立大経営情報学部准教授)

 こくぼ・あきこ 経営学博士。静岡県立大経営情報学部准教授(組織マネジメント)。企業や官公庁の組織開発プログラムやコンサルティングを手がける「ワークシフト研究所」所長。

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