テーマ : 経済しずおか

BM承継の新会社発足 創業家去り 伊藤忠主導 新社名はウィーカーズ

 自動車保険の保険金不正請求問題を起こした中古車販売大手ビッグモーター(BM、東京)の主要事業を承継した新会社が1日発足した。実質的な大株主で再生を主導する伊藤忠商事が同日、新会社名を「WECARS(ウィーカーズ)」と発表した。新会社の経営陣は「必要とされる会社になりたい」と訴えた。

ビッグモーターの主要事業を承継した新会社「WECARS」が発足し、記者会見で写真に納まる田中慎二郎社長(中央)ら=1日午前、東京都港区
ビッグモーターの主要事業を承継した新会社「WECARS」が発足し、記者会見で写真に納まる田中慎二郎社長(中央)ら=1日午前、東京都港区
ビッグモーターの新会社を巡る構図
ビッグモーターの新会社を巡る構図
再生への課題
再生への課題
ビッグモーターの主要事業を承継した新会社「WECARS」が発足し、記者会見で写真に納まる田中慎二郎社長(中央)ら=1日午前、東京都港区
ビッグモーターの新会社を巡る構図
再生への課題


 法令を軽視するような企業体質をつくったBM創業者の兼重宏行氏と長男宏一氏は完全に手を引いた。金融庁が密接な関係だった損害保険ジャパンに業務改善命令を出し、店舗周辺の街路樹を伐採するなどの事件にも発展したBMの問題は大きな節目を迎えた。
 新会社には伊藤忠や投資ファンドが計400億円を出資。中古車販売や整備の事業を承継した。約250店舗を展開し、看板は順次ウィーカーズにかけ替える。従業員は約4200人と不正発覚時と比べ約千人減った。
 伊藤忠の元執行役員でウィーカーズの社長に就いた田中慎二郎氏(61)は東京都内で記者会見し「われわれが率先して徹底的に誠実であり、事業の透明性を追求することが必要だ」と述べた。
 主要な事業を切り離した後の旧会社は社名をBALM(バーム)に変えて存続する。BMの社長だった和泉伸二氏がトップにとどまり、不正請求問題の訴訟対応や債務返済に当たる。創業家はBMの株式をBALM側に譲渡した。それによる対価を賠償費用などに充てることを了承している。
 伊藤忠はレンタカーサービスを手がける東京センチュリーの筆頭株主で、傘下に高級輸入車販売のヤナセも持つ。BMが金融庁から代理店登録を取り消された保険業務についても、来店型保険ショップを運営する子会社のほけんの窓口グループと連携させて補完する。
 ウィーカーズの事業を軌道に乗せ、2~3年後をめどに完全子会社化する方針だ。

 消費者に負のイメージ 「首位返り咲き」険しい道
 不正にまみれた中古車販売大手ビッグモーター(BM)が「WECARS(ウィーカーズ)」となって新たに出発した。活況を呈す中古車業界でウィーカーズは「首位に返り咲きたい」(山内務副社長)と掲げたが、道は険しい。
 日本自動車販売協会連合会によると、2023年度の国内中古車登録台数(軽自動車を除く)は前年度比3・7%増と、3年ぶりに前年度を上回った。半導体不足の緩和で新車販売が上向き、出回る中古車が増えたのが理由だ。
 だがBMは直近の販売台数が一連の問題発覚前の3~4割と低迷。品ぞろえの要となる買い取りの台数は8割程度にとどまっている。「車を売るならビッグモーター」とCMでうたったが、消費者に広がった負のイメージを払拭するのは容易ではない。
 自動車保険の不正請求問題では、損害大手各社との癒着の構図が露呈した。BMが事故車両の修理をあっせんしてもらい、見返りに自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)を割り当てるといった関係だ。BMが金融庁から取り消された保険代理店業務を巡り、山内氏は「信頼が回復できれば復活を交渉していきたい」と述べたが、透明性の向上が不可欠だ。
 一連の問題を経て約千人が会社を去った。中古車業界に限らず人手不足が課題となる中、再生を担う優秀な人材を獲得するハードルも高い。
 企業統治に詳しい青山学院大の八田進二名誉教授は、新会社発足に伴う記者会見にBM創業者の兼重宏行氏も同席すべきだったと指摘した。創業家との資金のやりとりや今後の関係性を巡る説明に不透明さが残り「新会社スタートに際してのアキレス腱(けん)に感じた」と語った。

いい茶0

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞