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自治体テレワーク施設、利用低迷 コロナで設置、交付金の検証必要

 新型コロナウイルス対策のため国が設けた地方創生臨時交付金を活用して自治体が設置したテレワーク用施設が閉鎖されたり、あまり利用されていなかったりする事例が相次いでいることが5日、分かった。新型コロナの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行して間もなく1年となる中、国と地方にはさまざまな財政支出の効果検証が求められる。

福島県白河市が整備したコワーキングスペース=4月、白河市
福島県白河市が整備したコワーキングスペース=4月、白河市

 政府は2020年度以降、臨時交付金に計18兆円超の予算を計上した。使途は多岐にわたり全体像の把握は難しいが、これまでも婚活イベントなど、コロナとの関連が低い事業への支出が判明している。テレワーク施設でも各地で似たような事例がありそうだ。
 愛媛県宇和島市は20年度に臨時交付金110万円を活用し、旅先に滞在して仕事をするワーケーション用拠点を設け、21年3月から運用を始めた。だが立地が不便だったため利用が低迷。21年度は3組5人がテレワークに利用したのみだった。22~23年度はワーケーションなどの活用がなく、24年に入り閉鎖に追い込まれた。
 福島県白河市のテレワーク用施設は、20年度に臨時交付金約1億6千万円を用いて整備した。だが共用の仕事場であるコワーキングスペースの利用者数が1日一桁台にとどまっているという。
 福島県会津坂下町でも臨時交付金を用いて、既存のコミュニティーセンターを改修するなどしてテレワークに使えるようにしたが、利用は低調だ。町の担当者は5類移行で「地方では出勤することが当たり前になっている」と諦め気味だ。
 こうした状況の背景を、一橋大大学院の佐藤主光教授(財政学)は「他の自治体の模倣などが多く、地域の実情やニーズに合った施策になっていないためだ」と分析する。各市区町村に政策企画力が十分に備わっておらず、必要な施策が構想できないため、人材育成が欠かせないと訴える。

 地方創生臨時交付金 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて政府が2020年度に始めた自治体向けの交付金。感染防止策や医療体制強化、中小企業支援、地域経済活性化、物価高騰対策など幅広い使途に活用された。自治体ごとに配分された上限の範囲で自治体が政府に事業計画を申請する仕組みで、新型コロナ対応としての予算計上額は18兆3260億円。

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