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難波副知事退任で余波 土石流、陣頭指揮は誰? 遺族ら不安の声

 任期満了に伴い難波喬司氏(65)が副知事を退任し、熱海市伊豆山の大規模土石流の対応について、県として誰が権限を持って陣頭指揮を執るのかあいまいになっている。川勝平太知事は県理事となった難波氏に従来通りの役回りを求めるが、県理事は部長級の一般職。難波氏も「副知事とは権限が異なる」との認識を示す。後任の副知事は空席のままで、遺族からは不安の声も漏れる。

行政対応検証委員会の最終報告の場で発言する難波喬司副知事(当時)=5月13日、県庁
行政対応検証委員会の最終報告の場で発言する難波喬司副知事(当時)=5月13日、県庁

 「部長、副知事、知事に一つ一つ丁寧に相談する必要がある。これまでとはやり方がだいぶ違うと思う」。難波氏は副知事退任日の5月17日、記者会見で語った。
 会見は、県の行政対応検証委員会の最終報告に対する県の見解を表明する場として設けられた。最終報告からわずか4日後だったが、「退任してからでは踏み込んだ発言ができない」(難波氏)と任期中の表明にこだわった。
 土石流の発生直後から強いリーダーシップを発揮してきた。安否不明者の名簿公表を巡って県と市が二転三転した際、72時間以内の公表を決断し全国的な流れにつながった。盛り土崩落を防げなかったことについて早々に県の責任に触れ、庁内がざわついたことも。
 川勝知事は同月12日の定例記者会見で、難波氏の処遇について「副知事の職制と同様のことを今後もやっていただく」と述べた。同市の土石流とリニア中央新幹線の水問題に関して、部局を横断して事務を調整する。
 ただ、ある幹部は「これまでは市長や副市長らと直接話ができたが、今後先方がどう対応するかは分からない」と懸念を示す。
 遺族や被災者でつくる「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(54)は「発災直後から人災の可能性や行政の責任に言及し、正直に説明してくれた。リーダーシップを執る人がいなくなるのは不安」と語る。
 7月3日で発生から1年を迎えるが、発生原因の究明に関する県の検証は継続中。行政手続きについては同市が「検証が不十分」と指摘する。復旧や復興の問題もあり、課題は山積している。

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