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遺族覚悟 責任と真相求め、県と市を提訴へ 熱海土石流1年

 災害関連死を含め27人が亡くなり、1人が行方不明となっている熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発生から1年を迎えた。遺族や被災者らでつくる「被害者の会」(瀬下雄史会長)は、同市と県を相手取り損害賠償を求める訴訟を起こすことを明らかにした。変わらぬ苦しみや悲しみを抱えながら、市と県が盛り土の崩落を食い止められず、甚大な被害につながった法的責任を追及する。

土石流が発生した現場を背景に、熱海市と県を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすことを明らかにした「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(右から2人目)や小磯洋子さん(右)ら=3日午前、同市伊豆山
土石流が発生した現場を背景に、熱海市と県を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすことを明らかにした「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(右から2人目)や小磯洋子さん(右)ら=3日午前、同市伊豆山
発生時刻に合わせて亡くなった人の冥福を祈る被災者ら=3日午前、熱海市伊豆山
発生時刻に合わせて亡くなった人の冥福を祈る被災者ら=3日午前、熱海市伊豆山
土石流が発生した現場を背景に、熱海市と県を相手取り損害賠償請求訴訟を起こすことを明らかにした「被害者の会」会長の瀬下雄史さん(右から2人目)や小磯洋子さん(右)ら=3日午前、同市伊豆山
発生時刻に合わせて亡くなった人の冥福を祈る被災者ら=3日午前、熱海市伊豆山

 「発生から1年が経過したが、誰も救済されていない」。被災の跡が生々しく残る現場近くで記者会見した弁護団の加藤博太郎弁護士は、強調した。同市は不適切な盛り土の造成を許し、長期間放置した。「過失は免れない」と厳しく非難。市に是正を求めず、森林法の適用を見送るなど適切な規制権限を行使しなかった県の過失も大きいとした。
 7月中に原告を募り、8月末ごろ静岡地裁沼津支部に提訴する見通し。同会の遺族ら84人は既に盛り土の現旧所有者に対し、総額約58億円の損害賠償を求めて提訴し、裁判は係争中。原告や請求額は今後、さらに増える見込みという。
 県と市はこれまで行政手続きの不備は認める一方、法的責任には言及していない。市議会の調査特別委員会(百条委員会)で証人尋問を受けた県と市の当時の職員は、それぞれ責任を回避するような発言に終始した。
 母親の陽子さん=当時(77)=を失った瀬下さんは「行政はこの1年、責任の押し付け合いをしている。真相究明のため訴える決心をした」と心境を明かした。長女の西澤友紀さん=当時(44)=を亡くした小磯洋子さん(72)は、土石流の発生前までは斉藤栄市長を応援していたという。「市はなぜ、土石流が発生してすぐに住民を避難させなかったのか」。見つからない答えを探すため、新たに戦う覚悟を決めた。
 

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