テーマ : 熱海土石流災害

失われた家、CGで復元図作成 熱海土石流被災者に無償提供へ

 東京都武蔵野市の建築イラストレーター阿部雅治さん(72)が、熱海市伊豆山の大規模土石流で失われた住宅の復元図を無償提供する活動を始める。被災者らからの希望を受けてコンピューターグラフィックス(CG)で作製し、A3判のカラー印刷にして届ける。わが家の姿とそこで過ごした家族のさまざまな思い出をよみがえらせることで「被災した方々の心を少しでも温められれば」と願う。

熱海市の被災者に向けて「想い出パース」の活動を始める阿部雅治さん。左が熊本地震、右が西日本豪雨の被災者からの依頼で手掛けた住宅の復元図=21日、東京都武蔵野市
熱海市の被災者に向けて「想い出パース」の活動を始める阿部雅治さん。左が熊本地震、右が西日本豪雨の被災者からの依頼で手掛けた住宅の復元図=21日、東京都武蔵野市

 東日本大震災を機に2012年から続ける「想い出パース」と名付けた取り組み。阿部さんは本業で約50年間、建物の完成予想図(パース)を作っている。震災後に「これからできる建物が描けるなら、なくなってしまったものも描けるのではないか」と、自らの技術を生かすボランティアの形を考えた。
 これまで東日本大震災と16年の熊本地震、18年の西日本豪雨、19年の台風19号の被災地から、約50件の要望に応じた。地元新聞社を通じて情報発信し、口コミでも広まった。
 時には建物とともに図面や写真も津波で流されてしまった被災者からの依頼がある。そうした場合はまず、記憶を聞き取ったり、手書きの間取りを寄せてもらったりしながら、インターネットでも資料を集めて図面を作り直す。その上でCGで復元図を描き、メールなどのやりとりで細部の修正を重ねて完成させる。庭木やペット、周囲の風景まで含め「一人一人の思い出を詰め込んでいく」のを意識するという。
 伊豆山の被災者に向けては、発生から間もなく1年となるのを待って申し出を決めた。不適切な盛り土の崩落で被害が甚大化しただけに「抱える無念さ、やりきれなさは今までの災害の被災者とは違うと思う」と阿部さん。「こういう活動があることをまず知っていただき、必要とされるならば力になりたい」と話している。
 問い合わせは阿部さん<電0422(77)8522>。メールはabe@rendering.sakura.ne.jp

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