テーマ : 熱海土石流災害

谷に倒木埋めた可能性 熱海土石流の崩落起点、20年前開発の業者 県指導記録なし

 熱海市伊豆山で盛り土が崩落して28人が死亡した大規模土石流の起点で、20年前に無許可開発していた業者が大量の倒木を谷に埋めた疑いがあることが26日までの取材で分かった。白黒化して判読できなくなっていた静岡県の行政文書に記されていた。20年前に土砂崩れが起きた箇所とみられるが、県が業者に木を除去させた記録は文書になく、そのまま盛り土が造成された可能性がある。専門家は「土の中から、木のような有機物を取り除くのは常識だ。腐って水が通りやすくなり、崩れやすくなる」と危険性を指摘している。

掲載写真に「倒木放置状況」と説明が付いた静岡県の2003年の行政文書。倒木が谷に集められているという記述もあった
掲載写真に「倒木放置状況」と説明が付いた静岡県の2003年の行政文書。倒木が谷に集められているという記述もあった
土石流の起点になった逢初川の源頭部。赤丸部分が2003年の土砂崩れ箇所(写真は本社ヘリ「ジェリコ1号」から21年7月に撮影)
土石流の起点になった逢初川の源頭部。赤丸部分が2003年の土砂崩れ箇所(写真は本社ヘリ「ジェリコ1号」から21年7月に撮影)
掲載写真に「倒木放置状況」と説明が付いた静岡県の2003年の行政文書。倒木が谷に集められているという記述もあった
土石流の起点になった逢初川の源頭部。赤丸部分が2003年の土砂崩れ箇所(写真は本社ヘリ「ジェリコ1号」から21年7月に撮影)

 県が2003年3月に作成した行政文書(D55)の「無許可部現地状況」という項目に「谷状になっている箇所に倒木が集められており、このまま埋められてしまう可能性がある」と記されていた。この文書は第三者委員会の検証対象から外され、裁判所にも提出されていない。
 当時、谷の上部は広範囲に木が伐採され、県は宅地造成を無許可で行ったとして都市計画法に基づく工事停止命令を出していた。ただ、県が倒木に関してどのように業者を指導したのかという対応は他の文書にも記されず、盛り土を補強させた記録もない。
 土砂崩壊のメカニズムに詳しい土屋智静岡大名誉教授(砂防学)は「木は土の中に絶対残してはいけない。枝によって空間ができ、転圧(締め固め)が効かない。20年たっていても影響はある」と解説する。
 文書に添付された写真には「倒木放置状況」と説明があり、切り倒された大量の樹木が無造作に谷に集められた状況が写っていた。県が情報公開条例に基づき開示した際、このカラー写真は白黒で判読できなかったが、本紙の指摘で元のカラー文書が再開示されて状況が分かった。白黒化された別の文書(D64)の写真でも、20年前の土砂崩れ箇所に倒木が集まる様子が再開示後に確認できた。
 木を埋めた疑いのある箇所に造成された盛り土の崩落は、時間差で複数回流れ下った2年前の土石流のうち、下流域の多くの住民を巻き込んだとみられる土石流最大波のきっかけになった可能性がある。

 熱海土石流を巡る県の行政文書の白黒コピー問題 土石流の起点付近の開発行為に関し、業者への指導内容などを記録したカラーの行政文書が白黒化され、一部が判読できない状態で開示・公表されていた。県は「カラー文書を白黒コピーした結果、不鮮明になった」と説明しているが、県庁の白黒コピー機で判読できない状態は再現できていない。印刷やスキャナーの技術に詳しい専門家は「濃度などを変えて文書の画像が加工された可能性がある」と指摘している。

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