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熱海土石流起点付近 第三の盛り土「不適切」箇所に含まれず 擁壁崩壊、土砂流出後も放置

 熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流の起点近くに残されている「第三の盛り土」が、静岡県の公表した「不適切盛り土」163カ所に含まれていなかったことが12日までの市や県への取材で分かった。この盛り土は10年以上前に擁壁が崩れ、土砂流出も発生しながら放置されていたが、市は「不適切」に該当しないとして県に報告していなかった。

残土が積み上げられ、擁壁が一部崩壊していた「第三の盛り土」=2010年11月、熱海市伊豆山(市の公文書から抜粋)
残土が積み上げられ、擁壁が一部崩壊していた「第三の盛り土」=2010年11月、熱海市伊豆山(市の公文書から抜粋)
「第3の盛り土の位置」(県の資料に加筆、修正)
「第3の盛り土の位置」(県の資料に加筆、修正)
残土が積み上げられ、擁壁が一部崩壊していた「第三の盛り土」=2010年11月、熱海市伊豆山(市の公文書から抜粋)
「第3の盛り土の位置」(県の資料に加筆、修正)

 県は、許可を受けた際の開発計画と異なっていたり崩壊が発生していたりする盛り土を「不適切盛り土」とし、各市町の把握している情報を集約。4月下旬に地番などの位置情報や位置図をホームページで公表した。各市町は盛り土総点検などで把握した箇所を県に報告。熱海市は21年の土石流で落ち残った盛り土と、南側尾根の斜面にある「第二の盛り土」は「不適切盛り土」と報告していた。
 「第三の盛り土」は土石流で崩落した盛り土北側の別流域に造成された。神奈川県小田原市の開発業者が都市計画法や森林法などの許可を受けたが、工事中に排水施設の不備などが見つかって熱海市や静岡県から是正指導を受けた。業績悪化に伴い工事を中断し、14年4月に業者は解散。崩壊した擁壁や高さ10メートルを超える盛り土が残されたまま緑化が進んでいたとみられる。関係法令の許可は20年に現土地所有者に引き継がれた。
 熱海市や県の公文書によると、08年5月に近くの道路に土砂が流れ、近隣住民から市に苦情が寄せられた。10年7月には別の業者が造成地に土砂を運び込んだ。ただ、市や県が現場で詳細調査をしたり、是正を完了させたりした記録は残っていない。
 市の担当者は「現状で違法性が確認されていないことから不適切盛り土に該当しないと整理している。今後、違法性が確認できた場合は不適切盛り土として公表することも考えられる」とコメントした。

市、県 詳細調査なく 異なる法令所管  「不適切盛り土」として公表されていなかった熱海市伊豆山の「第三の盛り土」は、市が都市計画法、県が森林法でそれぞれ許可を出した造成地。ところが、市も県も開発業者の工事中断に伴い、長年にわたって是正指導をやめていた。異なる法令を所管する市と県のどちらが業者を指導するのか明確にならないまま、盛り土崩壊の危険性を判断する詳細な調査をしない状況も続いていた。
 複数の関係者によると、県と市、土地所有者の協議は2021年7月の土石流発生後に中断。協議が再開されたのは今年3月で、市に権限がある都市計画法の対応を先行することがようやく決まったという。
 県の担当者は「市が対応すべきなのに、対応してこなかった」と強調。不適切盛り土の公表に関しても、「公表しないのか」と市に報告を促したが、拒否されたとしている。

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