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相次ぐ無届け開発 行政指導は再び後手に【残土の闇 警告・伊豆山⑰/第3章 放置された10年④】

 熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部で崩落した盛り土から南に300メートルほど離れたエリアにある太陽光発電施設と森を切り開いた平地。どちらも土地の所有権が事業家の男性(85)に移ってから開発された。行政の対応はここでも後手に回っていた。

土砂が盛りこぼされた斜面。住民は「第二の盛り土」と呼び、早急な安全対策を求めている(熱海市公表資料より)
土砂が盛りこぼされた斜面。住民は「第二の盛り土」と呼び、早急な安全対策を求めている(熱海市公表資料より)

 2016年6月。現所有者側が森林を伐採し、幅3メートル、延長400メートルほどの道を造っていたのを市職員が発見し、太陽光発電施設の建設計画があることが分かった。市はすぐに伐採届を提出するよう指導したが、現所有者側が届け出たのは半年後。その後も施工者が発生残土を近くの沢に捨てるなどの問題行為が判明し、市は対応に追われた。
 隣接する平地も同じ頃に無届けで造成された。現所有者側が目的などを記載した「緊急伐採届」を提出したのは約1年後。豪雨で土砂崩れが発生し、急きょ現地の小山を崩し、土砂を利用して沢を安定勾配で埋め立て、安全確保を図った旨が記されていた。「事後報告だが、目的はあくまで二次災害防止」。市はそう受け止めたが、現所有者の元部下の男性は「太陽光発電施設のための整地だろう。緊急伐採届はつじつま合わせではないか」と懐疑的にみる。
 現所有者が周囲に伝えていたグラウンド整備構想の予定地がこの平地だった。現所有者代理人の河合弘之弁護士は「(21年7月の)土石流発生直前までグラウンドの整地はやっていた」と説明する。
 その頃、住民から市にこんな通報があった。「1日20台程度、10トンダンプが土砂を搬入している」。これが端緒となり、市は21年6月、平地に隣接する斜面に土砂が投棄されているのを把握した。いわゆる「第二の盛り土」だ。盛りこぼされた土砂にはコンクリート殻などの廃棄物が混入していた。この事実が明るみに出たのは土石流発生から1カ月以上たってからだった。
 斜面は今、市の指導で雨水対策のシートがかぶされているが、現地を知る住民は「風でめくれ、ほとんど意味がない」と嘆く。難波喬司副知事は「広範囲から雨水や地下水が集まる場所でなく大きな被害を及ぼす可能性は低い」としつつも、土砂の撤去と早急な対策の必要性を強調する。
 太陽光発電施設、隣の平地、そして第二の盛り土。面積を合計すると、県の許可が必要な1ヘクタールを超え、森林法の林地開発許可違反に当たる可能性がある。県は土石流後、三つの開発の関連性を認め、是正に向けて現所有者側と協議している。河合弁護士は「市や県の指導の下、善処に向かっている」と語るが、具体的な改善策はまだ見えてこない。
 土石流の起点となった盛り土は目と鼻の先。不適切な開発行為を食い止められなかった行政の甘さが重大な結果につながることになる。
 >開発に“お墨付き” 雨水流入を市も軽視か【残土の闇 警告・伊豆山⑱/第3章 放置された10年⑤完】

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