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土石流被災者 心に寄り添う 多角的に支援 熱海市伊豆山ささえ逢いセンター長/原盛輝氏【本音インタビュー】

 2021年7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流の被災者の見守り支援を続けている。被災者の悩みは多岐にわたり、時間とともに変化もする。現地のインフラの復旧工事が本格化する中、一人一人に寄り添いながら、分断された地域コミュニティーの再生を目指している。

原盛輝氏
原盛輝氏


 -被災者と接して感じることは。
 「センターは発生3カ月後に開設し、保健師や社会福祉士など6人の相談員が被災した127世帯を訪問したり、電話したりして悩みや不安を聞いてきた。少しずつ前に進もうとしている人もいれば、まだ誰とも話したくないという人もいる。先日、最後の行方不明者の太田和子さん=当時(80)=の骨の一部が発見された。良かったと思う人、災害に憤りを覚える人、発生時の惨状を思い出して落ち込む人など反応はさまざまだった」
 -被災者に寄り添う上で大切なことは。
 「被害状況や家族構成などで被災者の悩みは違う。避難生活を送っている人の中には、伊豆山に戻るか、戻らないかで悩み続けている人もいる。丁寧に傾聴し、それぞれの思いを尊重したい。夏の終わりごろに警戒区域が解除される予定だが、その後の生活に対する心配も尽きない。有効な支援情報を提供するなど、先を見据えたアドバイスが求められている」
 -被災地に開設している交流施設「いずさんっち」の状況は。
 「旧農協の建物を活用し、健康体操などを定期的に開き、住民同士が交流できる場所にしている。野菜の移動販売の会場にもなっていて、徐々に定着してきた。まだ伊豆山を離れている被災者が訪れるケースは少ないが、将来避難先から戻ってくる人と住民がつながれる場所になるよう運営していきたい」
 -今後の支援で意識していることは。
 「他の被災地の事例を勉強し、この先起き得る問題をイメージするようにしている。多額の義援金を受け取った後に働く意欲を失ったり、地域との交流ができずに孤独死してしまったりと、災害から時間が経過してから問題が深刻化したケースもある。市をはじめとした関係機関と連携しながら、多角的な視点で支援をしていきたい」

 はら・なるあき 1998年、熱海市社会福祉協議会に入職。小学校から高校までの12年間を伊豆山地区で過ごした。同地区の消防団に所属し、土石流発生時は住民の避難誘導に当たった。51歳。

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