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委員や市の意見書、公表しないまま廃棄 「全て公開」知事説明と矛盾 熱海土石流・静岡県検証委

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、静岡県が設置した行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が報告書を取りまとめた際、複数の委員や市から送られてきた意見書を事務局が公文書として保管せず、公表しないまま廃棄していたことが9日までの県などへの取材で分かった。報告書作成の経緯が不透明になり、議論した全ての内容を事後に公開すると約束していた川勝平太知事の説明と矛盾する対応になっている。

 複数の関係者によると、意見書は、検証委の事務局によって4月末に作成された報告書の原案に対し、各委員や市が修正を求める点を記載した内容で、事務局にメール送信されていた。県の行政対応に関して批判的な意見が含まれていたとみられる。
 事務局職員は県職員OBが務めていた。県によると、この県職員OBは報告書の取りまとめ段階でメールを紙に印刷したが、紙はその後、廃棄して残さず、メールのアカウントは事務局解散後に削除したという。県の担当者は「データも含めて削除済みと聞いている」と答えた。
 検証委の議論の透明性に関しては、川勝知事が2月の記者会見で「結論が委員全員一致か一部から異論が出たかでは意味合いが違う」という記者側の質問に対し、「ありていに全ての事実を報告する。検証の過程を明らかにしたい」と答えていた。
 検証委の報告書は「手が回らなかった」(青島委員長)として一部の関係法令に検証を重点化したが、熱海市が「検証のバランスを欠いている」と批判し、一部の委員も「検証が不十分だった」との見解を示している。

法の趣旨に反する

 行政の情報公開制度に詳しい前山亮吉県立大教授(政治学)の話 公文書の慎重な廃棄を定めた公文書管理法8条の趣旨に著しく反する運用だ。公文書の保存が大事な理由は文書を追うことで決定過程を可視化できる点。一つの結論に至るまでにメモや意見書などが重要な役割を果たすことが多く、それらも含めて「一括記録」として保存することは外交文書などで常識だ。結論だけの保存では点だけが残り、そこに至る多数の線が残らない。県には公文書管理の条例がなく「時代遅れ」の観がある。早急な整備が必要ではないか。

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