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土石流発生時に避難指示なし 熱海市長「法的責任ない」 市が行政対応総括

 熱海市は16日、同市伊豆山の大規模土石流について市の行政対応の総括を公表した。土石流発生時、市が避難指示を出していなかったことについて「法的責任はない」との見解を改めて示した。崩落した盛り土を造成した神奈川県小田原市の不動産管理会社「新幹線ビルディング」への措置命令を見送った対応についても同様の見方を示した。

 斉藤栄市長が記者会見し、それぞれの対応について「裁量権を逸脱した行政権限の不行使には当たらない」と述べた。避難指示を出さなかった対応を妥当と結論付けた理由について、発災当日は既に高齢者等避難を発令していたことや、天気が回復する予報だったことなどを挙げた。措置命令の見送りに関しても、同社が防災工事に着手し下流への危険性が減ったと判断したとした。
 盛り土の造成に際し、市が書類に不備がある状態で届出書を受理したことが判明している。静岡県の行政対応検証委員会は「『行政対応の失敗』の最大の要因」と厳しく指摘した。市は総括で「重く受け止める」とした一方、現地確認をするなどして書類の不備を補える事情があったとし「一定の合理性があった」と反論した。
 土石流発生から総括の公表まで1年5カ月を要した。斉藤市長は「申し訳ない」としつつ、「納得いくものを出す必要があった」と釈明した。
 遺族の中には、防災無線が聞き取りづらく避難が遅れ、犠牲が拡大したと訴える人もいる。また、県検証委は県が同社に作業中止を求めている最中、市が県風致地区条例に基づく開発許可を出したことを問題視している。総括ではこうした点への言及はなかった。
 総括は市内部で行われ、有識者ら第三者は関わらなかった。総括の範囲も周辺の宅地造成や太陽光発電施設などは含まず、崩落した盛り土に限定した。会見に同席した金井慎一郎副市長は「検証の場は裁判に移行していると認識している」と述べた。

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