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「地下水で崩落」結論へ 複数発生の要因不明 静岡県検証委 熱海土石流

 熱海市伊豆山の土石流を巡り、盛り土崩落の原因を探る静岡県の検証委員会が、大量の地下水の流入によって盛り土内部が泥状になって崩落に至ったと結論付けることが、6日までに関係者への取材で分かった。県が数値解析に基づき前回会合で示した地下水による崩落の推定を検証委委員が実験で裏付けた。8日に開く最終会合で取りまとめる。ただ、土石流が時間差で何波も発生した要因は特定できていないなど、全容解明と言えるかは疑問も残る。

盛り土内部の圧力状態を再現し盛り土が崩落する実験を行う小高猛司教授=8月、名古屋市
盛り土内部の圧力状態を再現し盛り土が崩落する実験を行う小高猛司教授=8月、名古屋市

 県は逢初(あいぞめ)川源頭部でさまざまな調査を行い、地形や地質、地上と地下での水の流れ、不適切に造成された盛り土の状態などを調べた。それらのデータを基に外部の専門家が崩落のメカニズムを解析し、地下水が崩落に影響したと推定して6月下旬の前回会合で示した。
 検証委委員の小高猛司名城大教授(地盤工学)は7~8月、崩落現場で採取した土を使って、水圧により土が軟化する過程を再現する実験を行った。解析結果と類似するデータが得られた。県はこれらの成果を踏まえ、最終報告をまとめる。
 県の難波喬理事は6日までの静岡新聞の取材に「発生メカニズムは高い確度で解明できたと考えている」と述べた。
 ただ、本紙の取材や県の調査で、土石流は1時間半以上かけて何波も発生したことが分かっている。第1波はゆっくり流れ下って途中で止まった一方、赤い建物を襲う様子がSNSで拡散して社会に衝撃を与えた後発の波は、泥水のような状態で、猛スピードで流れ下った。土石流の発生に時間差が生じたことや、土石流の波によって泥の性状が異なったとみられる要因については、検証作業でたどり着いていない。
 地表を流れる表流水が崩落の主因だと主張する土木関係者もいる。
 (社会部・武田愛一郎)

 ■吸水軟化現象 発生か
 名城大の小高猛司教授が行った実験は、降雨で河川の水位が上昇して堤防が破損、崩落する際、堤防にどのような力が働くかを正確に調べる手法。今回、崩落した盛り土内部の圧力状態を再現した装置に、円柱形の土(高さ10センチ、直径5センチ)をセットして少しずつ注水した。土はしばらく水圧に耐えたが、限界点に達すると一気に水を吸収し、どろどろになる「吸水軟化現象」が生じたことが確認された。崩落した盛り土も同様に、限界点で一気に水を吸って急激に軟化したことが推定されるという。

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