テーマ : 熱海土石流災害

流れ下る土砂、上流域で増加 砂防ダム1基分と推定 堆積土砂の撤去記録、県に残らず廃棄か 熱海土石流・崩落盛り土

 昨年7月に土石流が発生した熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川流域の地形データ分析資料で、源頭部の崩落した盛り土(残土処分場)から流れ下った土砂が上流域の途中で約4千立方メートル(砂防ダム1基分)増加したと推定されることが19日までに分かった。上流域に堆積した流出土砂の撤去記録が静岡県に残っていないことも判明。県は「記録文書を廃棄した可能性がある」と説明している。

土石流発生前後の逢初橋流域の地形変化を表した地図
土石流発生前後の逢初橋流域の地形変化を表した地図

 地形データ分析は、土石流発生前の2019年12月と発生3日後の標高差から土砂量を計算した。測量会社が実施し、盛り土崩落の発生原因を調べる県の検証委員会の資料に掲載されていた。
 分析によると、源頭部の崩落土砂は約5万8千立方メートル。砂防ダムで約7千立方メートルを止めたとされ、下流域への土砂は約5万1千立方メートルに減るはずだが、集落のある下流域に流れ下った土砂は約5万5千立方メートルだった。砂防ダムの計画容量に相当する約4千立方メートル分、土砂が多かった。
 逢初川では盛り土造成前から河口に土砂が流出していた。県は盛り土造成前後に源頭部から流出した土砂が上流域に堆積したり、土砂が流れ下る際に川沿いの地盤を巻き込んだりして盛り土の土砂と一緒に流出した可能性があるとしている。
 土石流発生前に砂防ダムにたまった土砂を撤去していた可能性もあるが、県は「土砂撤去には切迫性を考慮する」(砂防課)と説明。通常は撤去しないままだという。ダムの上下流を含めて、堆積した土砂を撤去した記録文書は見つかっていない。

 ■記者の目=砂防法の目的 認識を
 「土石流危険渓流」の逢初川流域は上流から河口まで急勾配が続く地形で、上流域に土砂が堆積していると下流域まで流れ下る危険性が高まる。そうした治水上の危険性を減らすために1億円余りの税金を投入して砂防ダムが造られていた。
 ところが昨年7月の土石流では、崩落した盛り土の量を上回る量の土砂が下流域に流出していた。上流域の開発後の状況を記した県や市の公文書も考慮すると、盛り土とは別に、上流域に相当量の土砂が堆積していた疑いがある。
 砂防法には、上流域の土砂の流下量を少なくすることで下流域の住民の生命や財産を守る目的があるが、その目的は果たされなかった。熱海土石流に関して県の砂防担当者はいまだに「砂防法の所管外」と抗弁しているが、再発防止に向けて砂防法の本質的な目的をきちんと認識してもらいたい。

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