テーマ : 熱海土石流災害

大自在(7月3日)熱海土石流2年

 きのう取り上げた感想文の課題図書「スクラッチ」。絵を黒く塗りつぶした美術部部長の中3、千暁[かずあき]は小4の夏、母の実家がある田舎町に引っ越してきた。「7月に入ってすぐの超大型台風」で自宅が2階まで浸水したためだ。
 著者の歌代朔[うたしろさく]さんは愛媛県在住であり、2018年7月の西日本豪雨が頭に浮かぶ。物語の中、避難所で千暁が描いた明るい色のタンポポの絵に、被災以来表情がなくなっていた母親は笑みを浮かべた。災害もコロナ禍同様、心に深い傷を負わせる。
 21年7月3日の熱海市伊豆山の大規模土石流から2年。当日東京から静岡市に車で向かっていた知人は東名高速を大井松田インターで出された。一般道は土砂崩れなど所々で通行規制。冠水頻発地域で迷って周囲を海に例えたメールに豪雨被害のテレビニュースを見ながら気が気でなかった。
 法令違反の大量の盛り土が崩壊した土石流で28人が犠牲になり、現在も避難生活が続く人がいる。「開発と災害は両立できないトレードオフの関係にある」と鈴木猛康山梨大名誉教授(地域防災)。
 メガソーラーなど、良かれと思った開発や制度が後に大きな災いを招くことを鈴木氏は「増災」と呼ぶ。土石流災害で県や市がすべきだったことは「開発行為そのものを許可しないことであったはず」(「増災と減災」理工図書)。
 川勝平太知事は県議会6月定例会で行政対応の再検証を表明した。人災ならば防ぐ手はある。検証は二度と起こさぬためであり、追及をかわすためではない。透明性の高い検証になるか注視する。

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