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熱海土石流百条委 市長「法的責任は司法判断」 申請受理「不適切」も

 不適切に造成された盛り土が被害を拡大させた熱海市伊豆山の大規模土石流。26日の市議会調査特別委員会(百条委員会)で、2度目の参考人招致に応じた斉藤栄市長は、盛り土に関する一部の行政対応が不適切だったと認めたものの、「法的責任は司法の判断に委ねざるを得ない」と従来の主張を繰り返した。終了後の取材に「最大の問題はそこではない」と強調し、森林法などの法適用の在り方を検証する必要性を訴えた。

土石流起点で崩落した盛り土付近の開発行為(県の資料に加筆、修正)
土石流起点で崩落した盛り土付近の開発行為(県の資料に加筆、修正)

 これまでの百条委などで、市は前土地所有者の不動産管理会社(神奈川県小田原市)が提出した盛り土の申請書類に不備があったまま受理していたことが明らかになっている。
 斉藤市長は6月下旬、遺族らでつくる「被害者の会」の瀬下雄史会長(54)らに直接謝罪している。これについて百条委では「住民の生命財産を守れなかったことを謝罪した」と説明。終了後の取材では「政治家としての思いを伝えた。ただ法的にどうかは別問題。道義的責任と捉えている」と述べた。
 現土地所有者の関係会社の元社員も参考人招致された。現所有者側は盛り土の危険性を認識していなかったと主張しているが、元社員は「(現所有者は)盛り土の最上部に何度も行っている。防災工事の必要性も認識しているはず」と述べた。
 百条委は26日までに現旧土地所有者や市、県の職員、盛り土造成の関係者ら39人の参考人、証人に質疑した。稲村千尋委員長は関係者への質疑は同日が最後との認識を示した。その上で「証言の食い違いがあり真相が解明されたとはいえないが、市の責任は当然あると思う」と述べ、11月定例会で百条委としての総括を報告したいとした。

 ■盛り土北側造成地の文書 一斉公表に含めず
 26日に開かれた市議会の調査特別委員会(百条委員会)で、斉藤栄市長は崩落した盛り土北側の宅地造成地の行政手続き文書を、昨年10月に一斉公表した盛り土関係の公文書に含めていなかったことを認めた。県は同じ宅地造成地の公文書を一斉公表時に開示している。
 県と市は報道機関などの情報開示請求に応じて昨年10月、盛り土に関係するとみなした公文書をまとめて開示していた。周辺の開発行為と盛り土崩落との関係について、市が限定的に解釈していた可能性が浮き彫りになった。
 斉藤市長は百条委で一斉公表した文書に関し「(土石流の起点になった逢初川の)源頭部に関連するものに限定して出した。基本的に崩落地に関する届け出等の書類を提出している」と説明し、情報開示に関する市の対応に問題はなかったと強調した。一斉公表の方法を県と事前調整したことも明らかにした。ただ、県と市で開示対象は異なっている。
 質問に立った米山秀夫市議は「約1年かけて百条委で議論してきたが、まだ知り得ない情報があるとすれば市への不信につながる」と疑問を呈した。斉藤市長は終了後の取材に「(市議会と)認識の相違があるのかもしれない」と答えた。
 この宅地造成地を巡っては複数の専門家が崩落した盛り土との関連性を指摘している。

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