テーマ : 経済しずおか

【新茶特集】「選ばれる茶産地」へ正念場 序盤の相場動向に注目

 今年の静岡県産新茶の摘採時期は平年並みかやや遅いとみられ、早場所で15日ごろ、中山間地では5月上旬ごろに始まる見込み。各地で平年より気温が上がった1、2月に芽の生育が進んだが、3月中下旬の冷え込みで抑えられた。4月上旬の断続的な雨による品質への影響も懸念される。

 一番茶の繰り越し在庫を抱える問屋が多く、特に高価格帯の仕入れに慎重姿勢が目立つ。3月下旬から本県産に先んじて静岡市中に届いている鹿児島県産でも、香りに特徴のある一部の荷などに引き合いがあるが「まだ様子見の業者が多い」(あっせん業者)。近年続く選別買いに徹する茶商もすでに散見される。
 開設以来最も早い初取引日を2年連続で更新する静岡茶市場の決断にも、関係者に懐疑的な見方が広がっている。問屋街では「初取引に出るのは数十キロ程度では」「商品の茶が出ていなければ新茶商戦は始められない」との声が聞かれる。茶市場は早期開場により新茶商戦の機運醸成を狙うが、相場設定いかんでは生産意欲の減退にもつながりかねない。序盤の相場動向が注目される。
 県産一番茶の生産数量が過去最低だった前年を上回るかについても、茶価低迷や高齢化による農家の減少で不透明さが残る。茶商側も「なんとか買い支えたいが、需要が追い付いていない中、ない袖は振れない」と本音を漏らす。
 JA静岡経済連によると、2023年県産一茶荒茶の平均価格は1キロ1955円(前年比35円高)と2千円割れが続く。経済連は今期の生産販売姿勢を「要望に応じた茶生産に取り組み、選ばれる茶産地静岡を目指そう」と定めた。輸出向けの有機茶などは需要が拡大している。生産と流通が情報共有を密にし、持続可能な茶業の再編を進められるか。正念場のシーズンとなりそうだ。

いい茶0

経済しずおかの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞