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【新茶特集】​自然仕立ての誇り脈々 カネタ太田園(浜松市天竜区) 「日本一へ」山あいで紡ぐ3代の志

 浜松市天竜区芦窪の斜面に広がる、二重に被覆された茶園。清流阿多古川のせせらぎが聞こえる山あいに、カネタ太田園の茶園はある。全国的にも珍しい自然仕立ての農法にこだわり、毎年「日本一の茶」を目指して家族で栽培に打ち込んでいる。3代で茶を栽培する太田昌孝さん(中央)と勝則さん(左)、美咲さん=4日、浜松市天竜区芦窪
 「世話をした分だけ、畑は正直に恩返しをしてくれる」。そう語るのは、全国茶品評会(全品)の普通煎茶4キロの部で農林水産大臣賞を3度受賞している太田昌孝さん(83)。枝切りして残した生命力の強い葉を育てる栽培法を貫き、冬支度には裏山で取った草を茶園に敷き詰め、春先の寒い日には夜間に被覆する。その献身的な姿勢は、さながら子を育てる親のようだ。
 太田さんは娘婿の勝則さん(61)、孫の美咲さん(36)と共に栽培に汗を流す。「3代同じ仕事ができる。これほど幸せなことはない」と語る顔には、自然と笑みがこぼれる。
 勝則さんは約40年、義父の背中を追って愚直に栽培を続けてきた。2017年には全品で農林水産大臣賞を受賞。「代々受け継がれてきた茶園はどこも栽培に適した立地で、その財産を受け継いでいる」と謙遜しながらも、経験と実績に自負をのぞかせる。
 美咲さんは大学卒業後に就農した。「不思議と私とおじいちゃんは茶の味覚が似ている」という。生産に加えて商品開発も手がけ「品評会用のお茶だけでなく、若い人に喜んでもらえるような商品も届けたい」と次代を見据える。
 多様な「山のお茶」が味わえるのが本県の特徴の一つ。平地の大規模茶園と異なり、栽培面積が小さい中山間地は高品質な茶生産こそが生命線。だからこそ、品評会にかける思いはひとしおだ。今年の全国お茶まつりは初めての地元開催。「全国に浜松天竜の茶の素晴らしさを広める機会にしたい」。長らく地域をリードしてきたカネタ太田園は、今年も万全の準備で新茶期を迎える。

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