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漁業風評被害「あった」8割 原発処理水放出半年 全国漁連アンケート

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出が昨年8月に開始し24日で半年となるのを前に、共同通信が、全国漁業協同組合連合会(全漁連)に加わる都道府県レベルの42漁連・漁協にアンケートした結果、応じた36団体の80・6%に当たる29団体が風評被害を「あった」「どちらかといえばあった」と答えたことが23日、分かった。大多数は中国が日本産水産物の輸入を停止したことに伴う被害を挙げ、影響が国内各地に波及したことが浮き彫りとなった。
 一方で「禁輸以外の風評被害は確認されていない」(水産庁加工流通課)というように、国内市場で買い取りを拒否されるといった被害を訴える声はなかった。
 風評被害の有無については、北海道や福島県など13団体(36・1%)が「あった」、東京都や鹿児島県など16団体(44・4%)が「どちらかといえばあった」とした。「どちらかといえばなかった」は静岡県など5団体(13・9%)、「なかった」は滋賀県と沖縄県の2団体(5・6%)だった。
 複数回答で聞いた被害内容は「輸出できなくなった」が最多の24団体で、中国や香港などにナマコやホタテ、養殖ブリなどを輸出できなくなった。次いで18団体が「魚介類の価格下落」と答え、こちらも中国などの禁輸が主な理由だった。価格が下がったものとしては、対中輸出の割合が高かったナマコが全国各地から、ホタテやアワビは東日本の産地から挙がった。
 実施した風評被害対策を聞くと、「漁師からホタテを買い取り冷凍保管した」(宮城県漁協)、「取れたナマコの再放流や出漁見合わせをした」(千葉県漁連)が出た。
 処理水放出に際し、政府は総額1007億円の水産業支援策を打ち出し、東電は禁輸に伴う損害も含めて賠償を始めている。こうした政府、東電の対策の評価については30団体が回答し「どちらかといえば」を含め「不十分」が60%、同様に「十分」が40%だった。
 政府には禁輸の撤廃、東電には迅速な賠償を求める意見が目立った。青森県漁連は「賠償金の概算払いなども検討し、水産業者が資金繰りに窮しないよう速やかに対応を」と求めた。
 アンケートは今年1~2月に実施。能登半島地震の被害対応に追われる石川県漁協など6団体は無回答だった。

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