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静岡県副知事、偏る内部登用 人選難航?無難な着地の川勝県政 増井氏就任へ

 4月18日に任期満了を迎える出野勉副知事(71)の後任に元静岡県地域外交監の増井浩二氏(66)の就任が県議会2月定例会で決まった。川勝平太知事と最大会派自民改革会議との溝が深まる中、側近となる副知事の去就に関心が集まったが、県OB起用で無難に決着した。増井氏を含め、川勝知事就任の2009年7月以降の副知事13人のうち9人が県職員かOBの内部登用。14年に就任した現静岡市長の難波喬司氏以降、中央省庁を含め外部起用は1人もいない。自民会派の県議らからは「川勝県政が敬遠され、国や外部から人を呼べない」と国との連携を不安視する指摘が根強い。

 出野氏の後任人事案に関し、県議会側は総務委員会での審査のため、知事側に2月定例会一般質問最終日の3月5日までに人事案提出を要請していた。知事側が増井氏起用を固めたのは2月22日。3月7日の総務委で、増井氏人選の経過を問われた京極仁志経営管理部長は「知事が出野副知事と相談して決めた。日程的にはぎりぎりだった」と述べた。県幹部は取材に「直前まで交渉状況が周囲に漏れず、議案提出の見送りも脳裏をよぎった」と人選の遅れに肝を冷やした状況を明かした。
 複数の関係者によると、川勝知事が中央省庁からの人材登用に動いた様子はなかった。川勝知事は県庁生え抜きの副知事を2期連続で起用しない方針とされるが、今回、県OBの出野副知事に対し続投を求めたとみられる。しかし出野副知事が固辞し、複数の県OBらが候補者に浮上。議会の反発や庁内の摩擦を考慮し、最終的に増井氏に絞り込んだ。2月22日に知事室で増井氏と面談し、副知事就任を強く要請したとされる。
 増井氏について一部からは「意外な選択だ…」との声もあったが、副知事退任後も県議の信頼が厚い吉林章仁氏(県信用保証協会会長)との関係が深いこともあり、県議会側の反発は起きなかった。知事に近い県幹部は「内外に敵をつくらず、知事とも話せる人物であることが最も重要だった」と推察する。
 元県職員で、県政に詳しい小泉祐一郎静岡産業大教授は「知事就任当初は県職員を信頼できず省庁からの派遣に頼ったが、今は職員を登用できる状況になった」と分析する。「激化する知事と議会との対立に巻き込まれずに、通常業務を遂行するには最適の人材」と財政や企画部門に通じた増井氏の起用を評価した。

幾度も物議、議会不同意も
 川勝平太知事による副知事人事はこれまでもたびたび物議を醸してきた。人選は知事任期を重ねるごとに難航する傾向がみえる。
 1期目の2012年には副知事3人制を巡って県議会が県政史上初めて人事案を不同意にした。当時の副知事の辞任で幕引きし、副知事不在の期間が生じた。任期2~3期目に3人制が実現した時期もある。
 22年5月の難波喬司氏退任後から同7月の森貴志氏就任までの約1カ月間は出野勉副知事1人でしのぐ事態となった。現在は出野氏と森氏の生え抜き2人体制になっている。
 川勝県政の約15年で中央省庁からの登用は、総務省出身の大村慎一氏、国土交通省出身の森山誠二氏、財務省出身の高秀樹氏の3人。国交省退任後の難波氏の外部登用はあったが、川勝知事が任命した副知事は県庁出身者が多い。
 中央省庁からの課長級以上の派遣職員は、川勝知事就任当時の09年は12人だったが徐々に減少し、19、20年度は各3人、23年度も5人にとどまる。

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