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大自在(3月8日)領土問題

 静岡県出身の日本語講師をモロッコで取材したときのこと。それまでおとなしく講義を聴いていた生徒たちがにわかに騒ぎ始めた。
 言葉が分からず何が起きているのか理解できなかったが、後から聞くと、アルジェリアと領有を争う西サハラについての講師の言及の仕方が不満で、抗議していたようだ。20年以上前のことだが、生徒たちがあまりのけんまくだったので、記憶に焼き付いている。
 日本の若者が彼らと同じぐらいに領土問題を巡って高い関心を持っているかは疑問だ。1月発表の内閣府の世論調査で、ロシアが北方領土を不法占拠している現状を「知らない」と答えた人は35・0%に上った。特に若年層の認知度の低さが目立った。
 政府は北方領土と島根県の竹島、沖縄県の尖閣諸島に関して日本の立場を紹介する「領土・主権展示館」(東京都千代田区)の改装に乗り出す。現在の展示は文字情報が中心だが、歴史や文化、自然を追体験できるプロジェクションマッピングを取り入れ、若年層を含む幅広い年代の来館を促したい考え。
 同館によると、2020年の移転オープン直後は1日当たり数百人が来館したが、コロナ禍で激減。現在も1日20~50人ほどにとどまり、ほとんどが60代以上だという。スタッフは「若い人にも関心を持ってもらいたい」と改装の効果に期待を寄せる。
 ところで、20代の息子2人と領土問題について会話したことは全くなかった。北方領土の現状を知っているのか尋ねてみた。「知ってるよ」とLINE(ライン)で返事があり、少し安心した。

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