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静岡県知事選、一枚岩にならない農業票 県農対協が大村氏推薦も西部JAは自主投票

 知事選の告示を9日に控え、静岡県内農業団体の動きが活発化している。川勝平太知事の農業生産者に対する差別的な発言が辞職につながっただけに、新たな知事を決める選挙への関心は高い。上部団体の方針に地域の事情や思惑が交錯し、一枚岩にならない情勢の中、立候補予定の各陣営は農業課題の解決策を打ち出し、懸命に取り込みを図る。
 4月25日、県内10JAのトップらで組織する県農政対策協議会(農対協)。元副知事大村慎一氏(60)の推薦を決めた鈴木政成委員長(JA静岡中央会会長)は終了後、報道陣の取材に「全会一致」を強調した。前浜松市長鈴木康友氏(66)の実績に一定の評価を示しつつ、県西部のJA関係者も含めて「(大村氏推薦への)反対意見は特段ない。全体の意思決定だ」と言葉に力を込めた。
 だが、JAとぴあ浜松の農対協は5日後、いずれの候補も支持しない「自主投票」を決めた。「組合員の中にも政治に対していろいろな意見がある」と渥美保広会長(67)。地域事情を考慮した上で「各人が判断する形」を取ったという。鈴木氏を支援する浜松の財界関係者は「浜松の経済界がまとまる時だ」とし、同JAの決定を歓迎する。
 JAみっかび農対協も自主投票を決定。中央会関係者は「県農対協の機関決定が出た中で印象は悪い」と苦々しく受け止めた。支援の意思決定を見送るJA掛川市関係者は「鈴木氏を応援する人が一定数いる。それぞれの判断に任せたい」と語る。同市で茶を生産する60代男性は「誰に投票するか決めていない。農業を深く理解する人に入れる」と政策を見極める構えだ。
 2年前に県東部8JAが合併し、今回が初の知事選となるJAふじ伊豆は「大村氏支援」で動き出した。「今回は時間がない」(幹部)とし、本来は各地区の支部に行う意見聴取を実施せず、4月30日の農対協で推薦を決定。翌日から各支部での説明と協力要請を始めた。「広い東部全域でいかに支持を浸透させられるか」とギアを上げる。
 超短期決戦となる中、農業票はどの候補に向かうのか。号砲と同時に各地域で攻防が激化しそうだ。

各陣営 振興策訴えに力  重点政策の一つに農林水産振興を掲げる大村慎一氏は、ミカンのオレンジ、お茶の緑をイメージカラーに選挙戦に臨む。地産地消やガストロノミーツーリズムの推進など振興策を打ち出し、中山間地も回って1次産業各団体の支持を固める。
 鈴木康友氏は1次産業の「稼ぐ力」向上を前面に押し出す。最先端技術を駆使したスマート農業、森林管理の国際認証取得によるブランド木材の販路拡大などを全県で展開する考え。農林水産業の可能性を他産業にも呼びかけ、さらなる成長を促す。
 森大介氏は「長期的には農業を基幹的な生産部門に位置づけ、農業と農山村を再生したい」とし、1次産業の振興を過疎地域の発展につなげる好循環を描く。中小、零細農家への支援策充実も訴え、幅広い支持の獲得を目指す。

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