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大自在(3月23日)殿様枕症候群

 「枕を高くして寝る」は心配事がない状況を指す慣用句。不意の敵襲などに備え、音や振動が分かるよう床や地面に耳をつけて寝る必要がないことに由来するとの説がある。
 だが、高すぎる枕は医学的には危険もあるようだ。国立循環器病研究センターが脳卒中の原因となる首の動脈の病気に、高く硬い枕の使用が関係していることを突き止め、病気の新概念を「殿様枕症候群」と命名した。英語論文では、その名も「ショーグン・ピロー・シンドローム」だ。
 患者らを対象にした研究では、普段使っている枕が高いほど発症率が高く、この関連は枕が硬いと顕著で柔らかい枕では緩和された。首の屈曲と病気の関連が分かったという。
 テレビの時代劇などで高くて硬そうな枕を見るたびに、マゲなどの髪形を保つためとはいえ「昔の人は大変だったなあ」と思う。同センターの研究チームが参照した19世紀の複数の随筆には「寿命三寸楽四寸」という言葉があり、枕が4寸(約12センチ)だと髪形が乱れず楽だが、3寸(約9センチ)の方が長生きできるとの意味と考えられている。
 当時から高い枕の危険性が認識されていた可能性があるというのは興味深い。話を現代に戻すと、高い枕に首を預け、寝たままで長時間スマートフォンを見続けるようなことも同様のリスクになり得るそうだ。
 同じく原因が姿勢に関係し「症候群」と付く病気に、「殿様」とは名称が対照的な「エコノミークラス症候群」がある。こちらは災害関連死の原因などとして認識が広がっているが、殿様枕の方は果たしてどうなるか。

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