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大自在(5月6日)1万5000年に一人の天才

 プロボクシングで世界タイトル13回連続防衛した具志堅用高さんは、所属ジムから「100年に一人の天才」として売り出された。その後、世界王者となった大橋秀行さんは、「150年に一人の天才」がキャッチフレーズだったという。
 大橋さんが会長を務めるジムで腕を磨くのが、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥選手。大橋さんがかつて「1万5000年に一人の天才」とインタビューで答えていた井上選手がきょう、東京ドームでルイス・ネリ選手(メキシコ)との防衛戦に臨む。
 26戦全勝。モンスターの異名をとる井上選手の強さを最も知っているのは、26の戦績に名前のないボクサーかもしれない。2階級で日本王者になった黒田雅之さんだ▼黒田さんは2012年、井上選手のプロテストの相手を務めた。その後も、実戦形式の練習であるスパーリングの相手に指名された。井上選手と戦った選手の生きざまを描いた「怪物に出会った日」(森合正範著、講談社)に詳しい。
 150ラウンド以上のスパーリングをこなした黒田さんは、「怪物と最も拳を交えた男」と呼ばれる。「強くなることへの『飢え』っていうんですかね。(井上選手は)プロとしての向上心や1番になる気持ちがすごく強い」。
 72年前、東京ドームと隣接する場所にあった後楽園球場に4万人の観衆を集め、故白井義男さんは日本初の世界王者となった。戦後復興へ向かっていたあの頃と変わらぬハングリーさを井上選手は持ち合わせているのだろう。どんな戦いを見せてくれるか。

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