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集票の鍵握る経済界 静岡対浜松、熾烈な攻防 地域感情過熱、照準は東部に【静岡県知事選 集票の行方㊤】

 過去最多の6人が立候補した知事選(26日投開票)は中盤戦に入った。政党の公認や推薦を受けた共産党県委員長森大介氏(55)=同党公認=、元浜松市長鈴木康友氏(66)=立憲民主党、国民民主党推薦=、元副知事大村慎一氏(60)=自民党推薦=は地域や党派を超えた支持獲得に懸命だ。集票の鍵を握る経済界、政党の思惑や動向を探った。

静岡、浜松の主要経済人と支援集会に参加する聴衆のコラージュ。選挙戦は折り返し、陣営の候補者支援に一層熱が入る
静岡、浜松の主要経済人と支援集会に参加する聴衆のコラージュ。選挙戦は折り返し、陣営の候補者支援に一層熱が入る

 「彼一本でまとまりませんかと提案したのだが」
 静岡ガス元会長の岩崎清悟氏(77)は9日の告示前後から、候補者擁立を巡る経緯を周囲に語るようになった。川勝平太前知事が突如辞意を表明した直後の4月初旬、スズキの鈴木修相談役(94)と面談し、元副知事の大村慎一氏を一緒に担げないか持ちかけたとする内幕だ。
 15年ぶりのトップ交代で地域が分断するのを避ける狙いだった。県内政財界に知られた存在の大村氏ならうまくいくのでは-。大村氏自身も昨年7月の総務省退官後に将来的な知事選出馬を決意し、人脈構築などの準備を進めていた。
 しかし経済界の最重鎮に提案は響かなかった。修氏は既に自前候補を探していたとされ、関係者は6月から5月に川勝氏が急きょ辞職を前倒ししたのも「川勝氏と通じた修氏の高等な選挙戦略」とみる。超短期決戦を制するための候補として、県西部で高い知名度を誇る元浜松市長の鈴木康友氏が選ばれた。
 こうして静岡と浜松の経済界が相対する構図が、経済界の深い関与で固まった。影響力を持つ2人の経済人が地域の事情と将来を熟考した末の決断だった。静岡商工会議所の政治団体が大村氏推薦を決めるなど、各地の経済団体も判断を迫られていった。
 選挙戦に入ると、両陣営とも地域感情を過熱させ支持拡大を訴える場面が相次いだ。康友氏の陣営幹部は9日の浜松市の出陣式で、県西部は納税額の割に県の事業投資が少ないとし、「浜松から知事を」などとたきつけた。大村氏支援の県中部の企業幹部は、康友氏の市政運営に深く関わったとされる修氏を念頭に「同じことが県政でも行われていいかを問う選挙だ」と明言するように。ある中小経営者は「どちらも本音なのだろう」と冷静に見守る。
 さらに両陣営が一層の集票を求めて狙いを定めるのが東部・伊豆地区だ。
 ハマキョウレックスの大須賀正孝会長(83)も関わる康友氏陣営では自動車系、物流系支援者が康友氏が同地区を遊説したタイミングで自社の関係拠点と紹介企業回りを強化。票の掘り起こしに走る企業関係者は「他陣営が来た形跡がないところもあり、感触は悪くない」と手応えを口にする。
 大村氏陣営は韮山高同窓会長でもある岩崎氏や静岡鉄道の酒井公夫会長(69)が精力的に支持取り付けに動く。地元の県議市議も飲食、機械製造、水産、システム系と幅広く働きかけ、「大村支援の態度を鮮明にする人が増えた」とする。
 熾烈(しれつ)さを増す両政令市経済界の攻防。財界中堅の一人は「静岡県の雄を自負する静岡、浜松の対立構図はやむを得ず、むしろ思い切り戦っていいのでは」とした上で、「本県の稼ぐ力が落ちていることは周知の事実。選挙後はしこりを残さず、再生の道筋を共有できれば」と願う。
 このほか政党の支援を受ける候補者では、共産党県委員長森大介氏は特定企業を回らない活動で支持拡大を図る。
立候補者
上から届け出順
 横山正文 56 諸新
 森大介 55 共新
 鈴木康友 66 無新(立民、国民推薦)
 大村慎一 60 無新(自民推薦)
 村上猛 73 無新
 浜中都己 62 無新
 ※諸は諸派、共は共産、無は無所属。敬称略。

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