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【静岡呉服町火災殉職】消防組織 規範と指揮に問題 難波市長「再発、強い危機感」

 2022年8月に静岡市葵区呉服町の雑居ビルから出火し、市消防局駿河特別高度救助隊の男性=当時(37)=が殉職した事故を巡り、市は28日、事故を独自に分析し、背景にある組織的課題を再検証した報告書を公表した。消防局組織の課題として規範や安全管理の不徹底、指揮体制などに問題があるとの内容をまとめた。難波喬司市長は会見で「また同様の事故を起こしてしまう強い危機感を持っている」とし、消防長への改善を求めた。

静岡市による消防隊員殉職火災検証報告書と難波市長の記者会見の内容要旨
静岡市による消防隊員殉職火災検証報告書と難波市長の記者会見の内容要旨
静岡市葵区呉服町の消防士殉職火災について組織的課題の観点で調べた検証結果を報告する難波喬司市長=28日午前、市役所静岡庁舎
静岡市葵区呉服町の消防士殉職火災について組織的課題の観点で調べた検証結果を報告する難波喬司市長=28日午前、市役所静岡庁舎
静岡市による消防隊員殉職火災検証報告書と難波市長の記者会見の内容要旨
静岡市葵区呉服町の消防士殉職火災について組織的課題の観点で調べた検証結果を報告する難波喬司市長=28日午前、市役所静岡庁舎

 今回の殉職事故を巡っては昨年8月に外部有識者でつくる事故調査委員会が報告書を市に提出した。市は事故調査報告書は殉職事故に至る個別の活動への検証が不十分だったとして、市長部局内に原因検証チームを設置して再分析を進めてきた。事故調査報告書の精査や関係者への追加聞き取りのほか、警防活動に従事する消防職員669人を対象にアンケートを進めた。
 事故分析では、発生に影響したと認められる活動を挙げた。当時、駿河特別高度救助隊が命綱を付けずに濃煙の屋内に進入した活動は「活動制限が生じることを考慮したとしても消防現場における経験則を踏まえ、社会通念上合理的と言えない」と評価した。事故調査委員会が報告書で指摘した殉職の要因の一つ、男性が何らかの理由でホースラインを持たずに火元の部屋に入ったことについては、規範や評価の分析はできないとした。
 消防局でも内部に再発防止策検討委員会を設置し、検証を続けながら研修強化などの再発防止対策を進めているが、難波市長は「実効性はない」と断じた。「本当にやらなければならないのは失敗から学ぶことだが、今の消防局ではできていない」とした上で、「一人一人の隊員は非常に優秀だが、組織や指揮、管理システムが機能していない」と強調した。
 市は新年度に消防長直轄組織として「消防管理室」を設置し、見直しを進めることも明らかにした。池田悦章消防局長は「今回の検証で問題点を指摘されたことを真摯(しんし)に受け止め、組織の改善に取り組む」とコメントを出した。

 静岡市葵区呉服町の消防士殉職火災 2022年8月13日、葵区呉服町の雑居ビル3階でたばこの吸い殻から出火し、火元検索に当たった消防隊員の男性が死亡した。市消防局は事故翌日に「活動に問題はなかった」との認識を示したが、24年2月、基準に反してロープなどの命綱を使わない屋内進入を指示したとして現場で小隊長を務めた男性職員を減給6カ月の懲戒処分にした。市が設置した外部有識者による事故調査委員会は23年8月、火災現場で屋内への進入・退出の要領や隊員間の認識があいまいだった問題点を指摘し、「安全を最優先する組織風土の構築」を難波喬司市長に提言した。難波市長は同年8月の記者会見で「組織的課題の検証も必要」として、大長義之副市長をトップに市長部局内に検証チームを設けたことを報告していた。

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