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大自在(5月4日)首相外遊

 大型連休は後半に入り、県内の行楽地はにぎわいを見せている。帰省している人も多かろう。だれしも久しぶりに会う親族や友人の笑顔を見たいもの。最初に手渡す手土産を何にしようか、頭を悩ませた人もいるに違いない。
 外交にも手土産は欠かせないようだ。1日から外遊に出かけた岸田文雄首相が、最初の訪問国フランスでマクロン大統領に贈ったのは、漫画「ドラゴンボール」のキャラクターを題材にした江戸切子のグラス。
 漫画の作者鳥山明さんが3月に亡くなった際、マクロン氏がSNSに追悼メッセージを投稿したことなどを踏まえた選択らしい。日本の誇るソフトパワーに頼った首相だが、外交交渉に効果はあったのか。
 今回の外遊はフランスから南米に飛び、ブラジル、パラグアイを歴訪。さらにブラジルに戻ってから帰国する3泊6日の強行軍。外交にかける首相の熱意が伝わってくる。ただその背景に、国内での政権運営の行き詰まりがあるのは間違いあるまい。
 旧統一教会問題や閣僚・自民党議員らの相次ぐ不祥事、派閥の裏金問題などで、内閣支持率は自民政権復帰後の最低水準が続き、9月の党総裁選での再選も見通せない。得意の外交で挽回したいとの焦りが見てとれる。
 だが、日米連携強化を確認した4月の訪米でも支持率は回復しなかった。内政問題を抱えたまま外交手腕をアピールしても「国民の目をそらそうとしている」と受け止められるのが関の山だろう。帰国に際して首相が持ち帰るべき最大の手土産は、政治改革に腹をくくることではないか。

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