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尊富士、負傷の逆境はねのける 110年ぶり新入幕優勝 貴乃花、稀勢の里をほうふつ

 大相撲春場所千秋楽の24日、尊富士が右足負傷の逆境をはねのけ、110年ぶりの新入幕優勝を成し遂げた。2001年夏場所の貴乃花は右膝の痛みを乗り越え、鬼の形相で優勝。17年春場所は稀勢の里が大胸筋の重傷に耐えて逆転優勝した。新鋭は両横綱をほうふつとさせる執念を見せた。

大相撲春場所千秋楽で豪ノ山を破り、110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした尊富士=24日、エディオンアリーナ大阪
大相撲春場所千秋楽で豪ノ山を破り、110年ぶりとなる新入幕優勝を果たした尊富士=24日、エディオンアリーナ大阪

 相撲どころの青森県で中学まで鍛錬し、鳥取城北高、日本大では膝の故障に悩まされた。同じ苦境を克服した高校の先輩、横綱照ノ富士に憧れて伊勢ケ浜部屋に入門。速攻の「押し」を磨き、才能を開花させた。筋骨隆々な上半身と比べ、下半身はやや細身の印象を与えるが、瞬発力は抜群だ。体重143キロの今も「50メートルは6秒台で走れる」と豪語する。
 小、中学校時代に指導した「つがる旭富士ジュニアクラブ」の越後谷清彦総監督(61)は「とにかく攻めることだけを教えた」と述懐する。目先の勝利にこだわって投げたり、はたき込んだりすると、腕立て伏せやスクワットの罰則を命じた。「けがをしないために、前に出る相撲を取るしかない」との考えが根底にあり、尊富士は「押しが体に染みついている。生きてきた中で当時が一番厳しかった」と笑う。
 14日目の朝乃山戦で右足を痛め、救急車で病院に搬送された。学生時代の悪夢がよみがえる中、千秋楽の土俵に上がった。前に出る相撲と同じように、気持ちも下がらなかった。
 照ノ富士は尊富士に「まだ足りない部分は多い。今年中に三役、そこから上を目指してほしい」と大きな期待をかける。歴史に名を刻んだ24歳のホープは「いい景色を見たい。横綱、大関を目指すのが相撲道」と、さらなる高みを見据える。

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