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大自在(2月19日)双頭の鷲

 ロシアの紋章である金色の「双頭の鷲」は、王笏[おうしゃく]と宝珠をつかんでいる。王笏とは装飾されたつえで、宝珠は十字架が上についた球体。権威の象徴とされる。
 ロシアの反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏は2010年、プーチン政権関連の汚職調査のウェブサイト、「ロスピル」を立ち上げた。名前の由来は、ロシア語の「ラスピル」。「のこぎりで切ること」と訳されるが、国家予算を「切り落とす」という意味で汚職の俗語としても使われるそうだ。
 そのサイトのロゴも金色の双頭の鷲。だが、つかんでいるのは二つののこぎりだったという。「体制との闘いはおもしろいと、みんなに見せるつもりだ」。ナワリヌイ氏のユーモアである。英国、ドイツの3人の研究者による「ナワリヌイ プーチンがもっとも恐れる男の真実」(NHK出版)に記述がある。
 ネットを駆使して不正を暴き、交流サイト(SNS)などの情報発信で若者らの支持を集めたナワリヌイ氏が、北極圏で過酷な環境下にある刑務所で亡くなった。21年2月に過去の有罪判決の執行猶予手続きに違反したとして収監された。その後、別の罪で新たに懲役19年を言い渡された。
 ナワリヌイ氏が率いた「反汚職闘争基金」も過激派組織に認定され、活動困難な状況に追い込まれたままだ。リーダーを失い、「自由になるだけではだめだ。幸福にもならなければならない」と語った理想はかすむ。
 ロシアにどんな未来が待っているのか。強権支配を強めるプーチン政権。3月の大統領選で通算5選が確実視される。

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