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大自在(5月16日)盛岡の地で

 米紙ニューヨーク・タイムズが旅行先に薦める「行くべき52カ所」の2023年版に盛岡市が、24年版には山口市が選ばれた。国内地方都市の魅力が海外からの視点で見直されているのは間違いなさそうだ。静岡県にもチャンスがあるかもしれない。
 国際的に知られた都市ではなく、どうして盛岡なのか。選出時には少なからず驚きをもって受け止められ、その魅力を探ろうとマスコミ報道が相次いだのを覚えている。恥ずかしながら訪れたことがなく、岩手山とわんこそばのイメージしかなかったので新鮮だった。
 となると行ってみたくなる。訪れた大型連休中は好天にも恵まれ、雪渓を残す岩手山は青く大きく見えた。市街地を歩くと、教育者の新渡戸稲造、首相を務めた原敬と米内[よない]光政など、近現代の日本史に登場する先人たちの出身地と知った。
 もちろん石川啄木や宮沢賢治の足跡も多い。中心部にある盛岡城跡公園には啄木が詠んだ「不来方[こずかた]のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」の歌碑がある。賢治は何度も岩手山に登ったと地元の人に聞いた。
 観光ブランド形成は、歴史と文化、食とグルメ、散策や温泉などの掛け合わせが重要と聞いたことがある。静岡県にも構成要素は数多くあるはずだが、掛け合わせはうまくいっているのだろうか。
 啄木歌碑の周辺になぜかカモシカがいた。悠々と草を食[は]んでいる。人慣れしているように見えたが後のニュースで野生と分かった。盛岡市ウェブサイトによると出没は珍しくないらしい。自然の近さも心を大きくしてくれる。

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