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大自在(4月28日)消滅可能性

 30年以上前、記者として初めて担当した自治体が長泉町だった。記者経験は1年に満たず、行政や議会に関する知識も乏しい。行く先々でさまざまなことを一から教えてもらいながら、何とか日々の仕事をこなしたのを覚えている。
 当時の町の人口は3万3千人ほどだった。静岡県の推計人口によると、今月1日現在では4万3千人余り。3割も増えたことになる。
 生活・交通の利便性が高く、近年は手厚い子育て支援や独自の教育施策を講じている町としての評価が定着。「住みやすさ」に関する民間調査などでも静岡県内上位とされる。こうした状況が人口増の背景にあるのは間違いない。
 その長泉町が、人口減少対策を提言する民間組織「人口戦略会議」の報告書で、県内唯一の「自立持続可能性自治体」とされた。同会議は、子どもを産む中心世代の20~30代女性が30年後に半数以下に減ると推計される全国744市町村を、将来的に「消滅の可能性がある」自治体とし、長泉町など65市町村を100年後も若年女性が多いと見込める持続可能な自治体に分類した。
 静岡県内で消滅可能性自治体とされたのは9市町。10年前に発表された同趣旨の試算では11市町だったが、4市町が脱却し、2市が加わった。
 報告書には、人口減少の深刻さを示し行政や民間の対策を促す狙いがある。ただ、コロナ禍で鈍った首都圏への一極集中は再び加速している。自治体の努力は重要だが、パイを奪い合うような競争を強いるだけでは問題解決は難しい。国土を俯瞰[ふかん]した対策を真剣に議論しなければならない。

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