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大自在(5月17日)瑞浪市

 パレオパラドキシアは約1300万年前に絶滅した束柱類に属する哺乳類。北米西岸から日本列島にかけての北太平洋沿岸域で、海岸近くの浅い海にすんで海藻などを食べていたと考えられている。
 円柱を束ねたような臼歯とワニのような姿勢が特徴だ。ただ、こうした特徴を持つ哺乳類が現存しないため「古代の矛盾だらけのもの」を意味する名が付いた。先月、貴重な全身骨格の化石が発見されたと、岐阜県の瑞浪[みずなみ]市化石博物館が発表した。保存状態がよく、研究の進展が期待されている。謎に満ちた生態がどこまで解明されるのか、興味は尽きない。
 「化石のまち」として知られる同市。「瑞浪」は土岐川(水)の南の意味と、稲穂が実り風に揺らいで波のように見える風景が由来とされる。その水豊かな地の一角で今、井戸やため池の水位低下が問題となっている。
 同市大湫[おおくて]町の32カ所を調査した結果、14カ所で水位が低下し、一部は使用できない状態だという。リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が原因となった可能性が高く、JR東海は井戸設置や上水道への切り替えなど代替水源の確保を急ぐ。
 掘削工事は一時中断し、ボーリング調査をして地質を調べる。田植えの季節を迎え、地元からは原因究明と住民生活の保障を最優先にした恒久的対策を求める声が上がった。当然だろう。
 リニア工事に伴う大井川の水問題を抱える静岡県も、決して無関心ではいられない。原因が究明されるかどうかはもちろん、問題が起きた際にJRはどう対応するのか、化石以上に目が離せない。

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