テーマ : 新聞一面掲載記事

大自在(4月11日)失言騒動

 訓示中の発言で批判を受けた川勝平太知事が辞職届を提出した。最初に辞任発言が出た2日の囲み会見で、発言を切り取られたと主張し「ジャーナリズムあるいはメディアの質の低下を感じる」「ここまでこういう風潮が弥漫[びまん]していることに憂いを持っている」とメディアへの不信を隠さなかった。
 洋の東西を問わずマスメディアが政治家や著名人の発言を文脈から切り離し、扇動的に報道する傾向はある。発言は一人歩きし、本来の意図とは違う解釈が広まることも少なくない。
 歴史的な“失言騒動”の例を一つ。連合国軍総司令部(GHQ)を解任されたマッカーサーが1951年、米上院の公聴会で「日本人は12歳の少年」と発言し、日本中が怒りに包まれたことがあった。これを報道による曲解が原因だったとみる解釈がある。
 元外交官の多賀敏行さんが「『エコノミック・アニマル』は褒め言葉だった」(新潮新書)で書いた。日本人の思想的な柔軟さを例えるために12歳の少年と言ってしまったというが、真相はいかに。
 10日の定例会見で川勝知事はマスコミ批判と辞任の因果関係を否定しつつも「職業差別という悪の言葉が躍ったので広がった。残念に思う」と最後まで弁明を重ねた。一連の騒動を見ていると、なんとも後味の悪さを感じる。
 今後知事選が本格化するが、こんな後味の悪い失言騒動は二度と繰り返したくない。県民のためにもならないだろう。もちろんわれわれ報道機関も批判があれば真摯[しんし]に受け止め、発言の趣旨を正確に伝える努力を続ける必要がある。

いい茶0

新聞一面掲載記事の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞