テーマ : 新聞一面掲載記事

大自在(5月14日)ガザの詩人たち

 イスラエルは76年前の今日、建国を宣言した。その翌日、レバノン、エジプトなど5カ国がイスラエルに宣戦布告。第1次中東戦争が勃発した。
 第1次世界大戦に端を発する中東の対立が、アラブ諸国が「ナクバ」(大惨事)と呼ぶ事態に発展した。今、パレスチナ自治区ガザで起きている「ジェノサイド」(大量虐殺)とも言うべき現況は、ナクバの忌まわしい到達点にも思える。停戦を祈るばかりだ。
 4月下旬に出た雑誌「現代詩手帖」5月号が、各書店で売り切れている。版元は異例の増刷を決めた。特集は「パレスチナ詩アンソロジー」。同地に関わりのある詩人12人の言葉が胸に響く。
 ガザを代表する詩人リフアト・アルアライールさんは昨年12月6日、イスラエル軍の爆撃で亡くなった。パレスチナの土地、伝統の断絶に抗[あらが]う意志を込めた作品を残した。「もし、わたしが死ななければならないのなら/希望となれ/尾の長い 物語となれ」(「わたしが死ななければならないのなら」の一部。松下新土、増渕愛子訳)。
 現在もガザで執筆するアリア・カッサーブさんはリフアトさんの教え子。3月に書いた「人間-動物の日記」は、師の殺害に言及した。「どうして、彼の最期の言葉を裏切ることができる?/『あなたは、生きなければならない』」(松下、片山亜紀訳)。
 人口28万人のガザ南部ラファに、各地を追われた推定100万人が集まっている。国連機関は「本格的な飢饉[ききん]」を警告した。イスラエルはここに大量の砲弾を撃ち込むというのか。もう、大惨事はたくさんだ。

いい茶0

新聞一面掲載記事の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞