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大自在(5月9日)「野菜の苦み、政策の苦み」

 大型連休中、なじみの種苗店は、夏野菜の苗を求める人で混雑していた。トマトやキュウリなどと、多くが買い物かごに入れていたのはピーマンの苗。夏野菜の代表格ながら秋の寒さにも比較的強い。畑の初心者でも栽培しやすく、晩秋まで長く収穫できることが人気の理由のようだ。
 原産地は中南米の熱帯。諸説あるが、日本には明治時代に伝わったとされる。ただ、当初はほとんど普及しなかった。戦後、米軍の食用向けに国内で栽培が盛んになり、日本人が一般に食すようになったのは1960年代以降と。
 スーパーなどで売られている多くのピーマンが緑色なのは、未熟なうちに収穫されるから。食卓では緑色のピーマンが苦手な子供も多い。「苦いものは毒」。こんな動物的な本能が苦みがある野菜を嫌う理由とも。
 大人でも「嫌いな野菜」の上位に入ることもある。それでも家庭菜園で人気が高いのは、栄養を重視する食文化に受け入れられているからか。中からわたと種を取り出し、肉を詰めた料理は人気レシピの定番だ。
 大手調味料メーカーがピーマンの苦みを感じる仕組みを解明したと発表した。卵の黄身がそれを抑制する可能性があるとの研究成果を示す。子供のピーマン嫌いが少しでも減る料理のレシピづくりにつながるといい。
 きょう告示の知事選に出馬する候補の方々は、どんなレシピ(政策)を出してくれるのか。外観はピカピカ輝いても「中身がピーマン」では困る。たとえ苦みがあっても県民にとって栄養豊富な政策を示してほしい。みんなで見極めたい。

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