テーマ : 新聞一面掲載記事

大自在(4月1日)宝塚歌劇団

 東京勤務だった時に、宝塚歌劇団の公演を鑑賞したことがある。同時期に静岡市出身で当時、花組トップスターだった明日海りおさんの記者会見を取材する機会にも恵まれた。
 満員の劇場に年配の男性はわずかで居心地が悪かったが、舞台は素晴らしく、なぜ人気があるのか合点がいった。劇中のどの場面を切り取っても絵になる。演出や舞台装置の効果もあろうが、何より、少しの乱れもなく演技やダンスをする出演者の並々ならぬ努力あっての舞台だろう。どれほどの稽古を積むのかと思ったのを覚えている。
 歌劇団は1913年、「宝塚唱歌隊」として発足した。初公演は110年前の14年4月1日。プールを改造した劇場での舞台だったとホームページに紹介されている。
 その歴史ある歌劇団が、宙[そら]組に所属していた俳優の急死を巡り、上級生らのパワーハラスメントがあったとして謝罪した。厳しい上下関係や労働環境が背景にあったことは想像に難くない。完璧な舞台を目指す中で培われた“伝統”かもしれないが、歌劇団側は会見で、時代に合わせた教育や組織風土の改革を怠っていたと認めた。
 歌劇団の俳優養成機関「宝塚音楽学校」に今春、40人が入学予定だという。2000年以降で最も低かったとはいえ、競争率12倍の狭き門だった。若者が憧れる組織だからこそ、ふさわしい変化が求められる。同じ悲劇を繰り返してはならない。
 新年度、多くの若者が希望を胸に新生活をスタートさせる。迎える側はその希望に応える準備ができているか、省みる必要がありそうだ。

いい茶0

新聞一面掲載記事の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞